(柳原 三佳・ノンフィクション作家)
「ただいま。玉手箱を舞い降ろすことができました」
12月6日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)がおこなった記者会見を見ながら、久しぶりにワクワクした方も多いことでしょう。
(参考)6年ぶりカプセル帰還「ただいま」 「玉手箱」開けるの楽しみ―JAXA:時事ドットコム (jiji.com)
記事によれば、探査機「はやぶさ2」は、『6年に及ぶ往復52億キロの飛行を順調にこなした』とのこと。52億キロ? にわかに想像できませんが、地球に投下された「玉手箱」(カプセル)の中に入っているという小惑星の石(砂?)は、いったい何色をしていて、この先どんな謎を解き明かすのか・・・。
宇宙のことはよくわかりませんが、地球からはるか遠く離れたところにある「惑星」に思いを馳せるだけでもドキドキしますね。
宇宙旅行にも匹敵する、幕末の世界一周の旅
さて、「小惑星リュウグウの石」のニュースを見ながら、私はあることを思い出していました。それは幕末、異国の地から石を持ち帰っていたサムライたちのことです。
今から160年前、幕府が日米修好通商条約の批准書をアメリカ大統領と交わすため、ワシントンに派遣された「万延元年遣米使節団」。彼らが持ち帰ったのは異国の石や砂だけではありません。ネジ、ギヤマンの瓶、ガラス食器、双眼鏡や時計などさまざまな工業製品、植物や動物(猿や鳥)、その他、トランプや星条旗、英文の書籍などなど。今もそれぞれのゆかりの場所で大切に保管されています。
当時は自藩の外へ出ることも簡単には許されなかった時代です。ましてや、少し前まで「黒船」と恐れられていたアメリカの軍艦に乗って地球を一周するなんて・・・。
それはきっと、現代人にとっての「宇宙」に匹敵するほどの、未知なる地への旅路だったにちがいありません。