さらに7月10日、イラン革命防衛隊のものとみられる小型船3隻がホルムズ海峡付近で英国のタンカーに接近、イラン領海付近で停船するよう指示した。これに対して、護衛に当たっていた英海軍のフリゲート船が警告を発して撤退させるという事案が生じたとされている(イラン革命防衛隊の海軍はこれを否定)。

 インドは約6割、中国は約4割と、アジア諸国の原油輸入の中東依存度は高いが、中でも日本は88%と最も高い。第1次石油危機発生時に78%だった中東依存度はその後低下し、1987年に68%となったが、その後、中国やインドネシアなどアジアの産油国が輸出を停止したことで中東依存度が再上昇し、2度の石油危機の時より高くなっている。

 ホルムズ海峡は世界の需要の2割弱、取引量の4割弱の原油が通過している。同海峡を通過する石油タンカーは年間約500隻に達するが、タンカーは安全上の理由から同海峡に差しかかるとスピードを上げて素早く通過するようになっている。

 6月中旬からタンカーの船体価格に対して従来の10倍の0.25%分の保険料を支払うことになる(7月12日付日本経済新聞)など運航コストが1割以上上昇した、との声がタンカー業界から出ている(7月13日付日本経済新聞)。運航会社としては今まで以上に低速で航行して燃料代を抑えなければならない状況だが、背に腹は代えられない。

 米軍のダンフォード統合参謀本部議長は7月9日、中東のイラン沖などを航行する民間船舶を護衛するため、同盟国の軍などと有志連合の結成を目指す方針を示した。

 米軍はホルムズ海峡の安全をこれまで単独で維持してきた。しかし、シェールオイル生産の急増により米国の原油輸入の中東依存度が10%を下回った現在、中東産原油への量的関心は薄れている(原油価格高騰の際には、戦略石油備蓄=SPRを放出すれば対応可能である)。

 すでにインド海軍は6月下旬から独自にホルムズ海峡の護衛を開始しており、イギリスも12日、イランとの緊張の高まりからペルシャ湾に艦船を追加派遣する方針を固めた。このようにホルムズ海峡における自国船舶の護衛が現実のものになりつつある。