タンカーの安全航行に関する問題はホルムズ海峡ばかりではない。バブ・エル・マンデブ海峡は欧米向けの原油が日量400万バレル通過している。アラブ連合軍は7月8日、「紅海南部(=バブ・エル・マンデブ海峡)でイエメンの反政府武装組織フーシ派が爆発物を積んだ無人高速ボートで民間船舶に対する攻撃を行ったが、これを阻止した」と発表した(フーシ派はこれを否定)。
サウジに対するフーシ派のドローン攻撃が激化
筆者はこのところフーシ派の動向に注目している。特にフーシ派によるサウジアラビアへのドローン(無人機)攻撃は激化するばかりである。
フーシ派は7月4日、6日、8日、13日、15日と立て続けにサウジアラビア各地に対してドローン攻撃を行った。今年(2019年)に入り、サウジとアラブ首長国連邦(UAE)に関して、300超の軍事目標をリストアップしたが、ここに来てドローンや巡航ミサイル等などの攻撃兵器の生産能力が飛躍的に高まっているようだ。アルジャジーラは7月7日、「フーシ派がイエメンの首都サナアで『驚きに満ちた将来』と題する兵器の展示会を開催し、自ら製作した巡航ミサイルや長射程のドローンの見本を披露した」と報じた。
とどまるところを知らないフーシ派のドローン攻撃に怖じ気づいたのだろうか、サウジアラビアとともにアラブ連合軍を主導するUAEは7月8日、同国のイエメン駐留部隊を縮小したことを明らかにした。UAEは2015年からイエメンへの軍事介入を開始し、駐留部隊は3000人に上っていたが、戦死者が100人となり国内で大きな問題となっていた。UAE側は「任務が終了した」としているが、イランを巡る情勢の緊迫化に伴う自国防衛の必要性の高まりに加えて、UAE国内への大規模なドローン攻撃を未然に回避するためフーシ派に秋波を送った可能性がある。
UAEの撤退について難色を示していたサウジアラビアは、UAE軍が抜けた後のイエメン西部の防衛を肩代わりせざるを得ない状況に追い込まれている(7月11日付ロイター)。UAE軍がパトリオットミサイルなどの近代兵器も撤収したことから、サウジアラビアに対するフーシ派のドローン攻撃がさらに激化することが懸念されている。