「GDP比5%」の金額そのものより、「その支出で抑止が機能する形になったか」が重要
(1)台湾記載が消えた意味
台湾の名指しが見当たらない点は注目されますが、直ちに「台湾への関与放棄」や「はしごを外した」と断定するのは早いと思います。
今回のNDSは台湾という名称を前に出すより、インド太平洋では「第1列島線に沿って、相手が攻めても成功しない形を作る」という抑止構想を強調しています。第1列島線には台湾周辺が含まれます。
つまり台湾は文書中の言葉としては薄くても、実際的な抑止の枠組みの中にはきちんと組み込まれている、というのが私の見立てです。むしろ、台湾は日本と同様、戦略の中に包含されていると理解するべきでしょう。
(2)中国「対立ではなく力」=G2か
これはG2的な協調というより、「自らが強い立場を作って交渉する」というトランプ流の現実主義を反映した表現だと考えます。
対話や危機回避の窓口は維持しつつ、軍事的には「侵攻が成功しない条件」を整える。つまり、衝突は避けたいが、攻めても得をしない形は作る、という二層構造です。
対中政策は融和でも全面対決でもなく、競争を平和的に管理するための構えをより現実的かつ具体化する方向に寄ると考えます。
(3)日本と負担共有、GDP比5%
ここで問われているのは、単なる「金額」ではないでしょう。今回のNDSは、強い抑止力のメカニズムを作ることに重心があると思われます。
日本に期待されるのは、この地政学的重要な位置にいる国として果たすべきこと、つまり自国の領土・領空・領海と国民、国益を主体的に守り、同盟にも寄与することです。
具体的には、防空・ミサイル防衛、監視・情報、海からの侵攻を難しくする力、基地や社会の抗堪性、補給や整備を含む継戦能力など、抑止を実際に機能させる役割と能力です。
米海軍の原子力空母「ジョージ・ワシントン」で演説するトランプ米大統領(右)と高市早苗首相=2025年10月28日(写真:共同通信社)
GDP比5%は強い政治的メッセージですが、実際には「その支出で抑止が機能する形になったか」が評価軸になりやすい点に注意が必要です。
いずれにせよ、自分の国は自分で守る、という独立国家として当たり前の姿勢に日本はこれまで、十分向き合ってこなかったのではないでしょうか。今後はその姿勢が問われるでしょう。