(4)韓国が主役、米国は補助へ
これは同盟軽視というより、米国が最優先任務(本土・西半球、そして対中抑止)に集中するための役割配分と理解すべきです。国防力と産業基盤を持つ韓国が前面に立ち、米国は核抑止など決定的な部分で支える、という構えです。
この変化は、日本にとっても半島有事の後方支援や基地運用、ミサイル防衛の連接などで波及し得るでしょう。
日本に突き付けられてた「同盟の中で守られる側」から「同盟を機能させる側」への変化
(5)優先順位が「中国」から「米本土・西半球」へ
最大の特徴は、中国を軽視したというより、複数の危機が同時に起こり得る現実を前提に、米国の国防資源の優先順位、つまり守る順番を明示した点です。
国境、麻薬組織、パナマ運河やグリーンランドといった通商路・拠点を「国家安全保障そのもの」として扱い、ここに資源と注意を集中させる。
結果として、インド太平洋では同盟国への役割要求が強まり、同盟は言葉より実態で、より実質的に評価されるようになるかと思われます。
(6)『トランプ・コロラリー』と日本への影響
西半球の優先度が上がるほど、他地域では同盟国がより主導的役割を求められ、港湾・運河・通信・資源など「アクセスとインフラ」をめぐる競争は一層安全保障化します。
日本への影響として重要なのは、米国の関与が単純に減るというより、同盟の評価軸が「政治的連帯」から「自分の国は自分で責任を持ち、しっかりと守れているか」へ移る点です。
日本は、まず自国の防衛と地域の安定に責任を持ち、その上で同盟を主体的に機能させる側に回ることが求められています。
今回のNDSは、日本に対して「受動的:同盟の中で守られる側」から「能動的:同盟を機能させる側」へ、立ち位置を移すことを明確に迫っている、私はそう受け止めています。
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。



