若冲《動植綵絵》から花感あふれる4幅
多彩な出品作のなかで最大の見どころといえば、やはり伊藤若冲による国宝《動植綵絵》だろう。皇居三の丸尚蔵館の顔であり、海外でも絶大な人気を誇る日本美術作品。特に今回は「花」をテーマにした展覧会。訪れる人々が国宝《動植綵絵》の出品を期待しないわけがない。
では、花鳥画30幅の連作である《動植綵絵》からどの幅が選ばれたのか。前期(3/11~4/6)は《桃花小禽図》と《牡丹小禽図》、後期(4/8~5/6)は《梅花小禽図》と《薔薇小禽図》の計4幅が紹介される。

《桃花小禽図》は桃の木と満開の花、そして枝で遊ぶ白鳩と青色の小禽(鳥)をとらえた一枚。画面から春の明るさと強い生命力が伝わってくる。《牡丹小禽図》は牡丹の花で埋め尽くされた構図が印象的。2羽の小鳥が描き込まれているが、あふれる花々でどこか窮屈そう。若冲ならではの“徹底した描き込み”が堪能できる。

後期展示の《梅花小禽図》では、満開の白梅の古木のまわりで8羽のメジロ(ウグイスとする説も)が遊ぶ。屈曲する梅の枝が力強い。同じく後期展示の《薔薇小禽図》には太湖石に絡まるように咲き誇る3種類のバラが描かれている。バラの花はその多くが正面を向き、人の眼がずらりと並んでいるかのよう。不思議な味わいのある作品だ。