「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」展示風景。《王の頭部》前2650〜前2600年頃 ブルックリン博物館蔵

(ライター、構成作家:川岸 徹)

謎に満ちた古代エジプトの歴史と文化を、アメリカ・ブルックリン博物館が所蔵する約150点のコレクションでたどる「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」が東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで開幕した。

日本でも馴染み深い古代エジプト文明

 5000年以上前にアフリカ北部のナイル川流域で花開いた古代エジプト文明。ピラミッドに代表される巨大な建造物を築き、文字体系を発達させ、組織化された政治形態と社会階層を確立した世界最古の文明の一つだ。だが、古代エジプト文明の実態の多くはいまだ謎に包まれたまま。そんな神秘性が世界中の人々の知的好奇心を掻き立て続けている。

 日本でも古代エジプト文明は古くから人々の関心を集めてきた。幕末の1864(元治元)年に江戸幕府が派遣した遣欧使節団はエジプトに立ち寄り、スフィンクスの前で記念撮影を敢行。ちょんまげ姿の武士27人がスフィンクス前に並ぶ写真は海外でも有名だ。

 1965年には東京国立博物館にて古代エジプトの少年王ツタンカーメンの財宝が公開された。この「ツタンカーメン展」、開催初日の朝9時には悪天候にもかかわらず、徹夜組を含めて1200人の長蛇の列。その後巡回した京都、福岡を合わせた入場者数295万人は、現在も美術展総入場者数歴代1位の記録を守っている。ちなみに歴代2位も古代エジプト。2012年に東京・上野の森美術館と大阪・天保山特設ギャラリーで開催された「ツタンカーメン展~黄金の秘宝と少年王の真実」は208万人を動員している。

エジプト考古学者・河江肖剰が監修

河江肖剰氏

 2025年1月、東京・六本木、森アーツセンターギャラリーで「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」が開幕した。今回の展覧会はアメリカ・ブルックリン博物館の所蔵品を紹介するもの。彫刻、棺、宝飾品、土器、パピルス、さらには人間やネコのミイラ……。多種多様な展示品を通じて、高度な文化とその背景にある人々の営みをひも解いていく。

 展覧会の監修は、いま注目を集める気鋭のエジプト考古学者・河江肖剰(かわえ・ゆきのり)が担当。これまで日本で開催されたエジプト展はファラオ(古代エジプトの王)に焦点を当てたものが多かったが、本展では人々の暮らしにも大きく注目する。

「古代エジプトの人々はどんな暮らしを営み、何を食べ、何を畏れていたのか。夜はベッドで寝ていたのか、それとも床で寝ていたのか。最新の調査結果を交えながら、古代エジプト人の日常生活の様子を解き明かしていきたい」(河江肖剰氏)