野球選手に備わっている「仕事人」としての能力

 1年春の終わりにリーグ戦の試合に出るようになってからは、チームに勢いをつけるのが私の役割でした。

 大学時代は一番を打つことが多かったので、結果はともかく、1打席目でチームをションボリさせたくなかった。安打でも四球でもいいので、なんとかして出塁率を上げることを考えていました。

 野球は四番バッターやエースだけが活躍するスポーツではありません。出塁する役割もあれば、ランナーを進める役割もあります。たとえ四番バッターであっても、場面によってはランナーを進める役割に徹しなければならないこともあります。守備固めや代走で貢献する人も必要でしょう。

 試合に出ている人だけではありません。ベンチで仲間を鼓舞する。一塁や三塁のベースコーチとして冷静に状況を判断して、ランナーに指示するのも欠かせない役割です。

 さらに、ベンチに入っていない選手にも、相手チームの分析など、チームを支えるさまざまな役割があります。

 自分が主役になるとは限りません。たとえ脇役であっても、一人ひとりが場面によって臨機応変に自分の役割を果たして、チームが勝つのです。

 野球には「犠牲」という言葉がつきものですよね。犠牲バント、犠牲フライ。自分を犠牲にして、人を生かす役割も必要です。

 私自身も自分のプレーで人を生かすことに喜びを感じていました。自分はさておき、人が笑顔になってくれればいい、と。

 これは、仕事でも同じですよね。どんな組織にも、縁の下の力持ちとして献身的な働きができる人、周囲に気を配って進んでサポート役ができる人は不可欠です。

 私に限らず、野球選手にはこのような能力が自然に身についているのではないでしょうか。