現役ドラフトでソフトバンクから阪神に移籍した大竹耕太郎投手(写真:産経新聞社)
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少年野球からプロ野球まで「移籍」が好ましく思われない日本

 NPBとMLBには様々な違いがあるが、大きな相違点の一つが「移籍の流動性」だ。

 MLBでは、キャリアを通じて一つのチームに在籍し続ける選手は極めて少ない。MLBでは一つのチームに在籍し続ける選手を「フランチャイズプレイヤー」というが、10年以上のキャリアの現役でフランチャイズプレイヤーは、ドジャースのクレイトン・カーショウ(投手)、エンゼルスのマイク・トラウト(外野手)、アストロズのホセ・アルトゥーベ(内野手)など数えるほどしかいない。

 これに対し、NPBでは各球団の投打の主力選手の多くはフランチャイズプレイヤーだ。最近はそれでも選手の移籍が多くなったが、MLBに比べれば「ずっと同じチームにいる選手」は依然として多い。

 プロ野球選手は日米ともに「個人事業主」であり、球団とは個別に「契約」しているが、NPBでは、「会社員」のような「帰属意識」が強い。ドラフトで指名された選手の多くは、球団の「選手寮」で生活するが、このあたり、球団も選手を「社員」のように見なしているのではないかと思われる。

 端的に言って、MLBでは選手は「メジャーリーガー」という認識は強いが、球団への帰属意識はそれほど強くない。チームの勝利に尽くすのは当然として、請われればどのチームへでも移籍して働くと言う認識だ。

 これに対してNPBでは選手は「チームへのロイヤリティ」が非常に強く「同じ日本プロ野球の一員」という認識は希薄だった。2004年の球界再編で、労働組合「日本プロ野球選手会」がストライキを行ってから、多少この意識は変化しているようだが。

 アメリカで少年時代を送ったある野球指導者は、こうした日米に意識の差は「野球文化の違い」に起因するのではないか、という。

「僕は小学生の頃、アメリカの少年野球チームにいましたが、アメリカの子供は、レギュラーになれないと、すぐにチームを変わります。父親がそれを勧めるのです。少年野球チームは毎週のようにトライアウトをしているので、すぐにチームが決まります。

 帰国して日本の野球チームに入りましたが、同じ学区の子供はその学区のチームにしか入れない。移籍なんてとんでもない、という雰囲気で驚きました」

 と語った。