「制度に支えられているのはわかっている、でもなりたくてなった病気じゃない」
小林 真さん/慢性骨髄性白血病(NPO法人 患者スピーカーバンク理事長)
僕は21歳、24歳、29歳で骨巨細胞腫に罹患して、それぞれ手術と3~4カ月近い入院をしました。さらに38歳で慢性骨髄性白血病に罹患し、分子標的薬を内服する治療を12年間、続けています。
巨細胞腫の治療では、それぞれ100万円以上はかかったと思います。当時は若かったこともあり親が援助してくれましたが、裕福ではないので大変な負担をさせてしまったとずっと申し訳なく思っています。もちろん高額療養費制度を利用し、これがなければとても払えなかったでしょう。
慢性骨髄性白血病の治療は入院することもなく、分子標的薬を1日2錠服用します。薬価は1錠で約1万円するため、3カ月分の処方を3割負担で窓口支払いすると50万円ほどになります。薬代だけで年間約200万円かかるところを高額療養費制度によって、なんとか払える額に抑えられていますが、生涯にわたって飲み続けなければならない。現在は副作用の影響で休薬しているので制度は使っていませんが、治療や不安から解放されたわけではありません。
社会人になってから、ずっと働いて治療費を稼いでいる感覚です。いつ、どのタイミングでまた多額の医療費がかかるかわからないし、大したことのない病気や怪我でもよけいに検査が必要になることも多いから、使えるお金はとにかく貯金に回しました。健康な20代、30代なら楽しむような旅行や食事、交友関係などに使う気にもなれず、恋愛も経済的な負担があるから考えられないと思っていました。
とにかく将来が不安で、どれだけお金がかかるのか、10年生きるのにいくらあればいいのかと計算せずにはおれなかった。仕事を辞めるなんて絶対に無理だし、正社員であり続けなければならない。そのためにはしんどくても、平気な顔で働き続けなければなりません。
巨細胞腫の治療でダブルストーマになったことから現在も泌尿器科、慢性骨髄性白血病の血液内科を受診する必要があり、医療費はかなりかかっていますし、今後また分子標的薬を再開する可能性もあります。そんな中でも素敵なご縁に恵まれて、今年結婚することができました。病気や治療に関してしっかり理解し合い、これからは妻と安心して生きていきたいです。そのためにも、独身の時とはまた違う視点で、大切な人のために経済面での負担や不安を少なくしたいのです。