安定と言っても、終わることのない再発の恐怖と副作用による諸症状を抱えての生活です。1回目の入院は8日間でしたが、卵巣破裂で1リットル近く出血し、術後もひどい貧血状態が続いて、出勤できるまでに1、2カ月かかりました。2回目は開腹手術のため21日間の入院で、退院後も痛みと体力低下がひどく、やはり仕事は2カ月ほど休まざるを得ませんでした。3回目も開腹手術だったので入院は21日。抗がん剤治療がつらく、時短勤務を続けました。
直近の治療時に私の年収は400万円ほどで、高額療養費制度による負担上限額は多数回該当で月額4万4400円でした。実際にかかった医療費は約320万円で、3割負担なら100万を超えて年収の4分の1以上になっていたでしょう。制度があったおかげで負担したのは約62万円で、そこに交通費など諸経費が加わります。時短勤務や出勤数を減らしたことで収入も低下しているため、年によっては医療費の総額が年収を超えていた年もありました。
「治療の継続を難しくするようなニュースを聞くと社会に殺されていくような気分に」
維持療法ではリムパーザ(オラパリブ)という分子標的薬を用いました。経口の抗がん剤です。最大量で服薬していた時に、薬価を計算してみました。1回2錠を1日2回服用。薬価が1錠4788円で、単純計算すると1日で1万9152円かかります。1カ月(30日)なら57万4560円。3割負担だったら、17万2368円となります。それだけで、手取り収入がほぼ消えてしまう人もいるのではないでしょうか。
がんに罹患する前は週6日のフルタイム勤務をこなしていましたが、現在は手足の脱力感やしびれ、強い倦怠感などの副作用が残り、週4日の勤務をこなすのが精いっぱい。それ以外は、ほぼ寝たきりで過ごすことが多くなりました。同居の両親が高齢になるにつれ、本当ならば私がもっと家事や介護を担わねばならないのに、できないことが申し訳ないという気持ちが強くなりました。自分が役立たずの人間であると感じ、消えてしまいたくなることも少なくありません。抑うつや不眠といった心理的なケアのために、緩和ケア科や精神科でも治療を受けています。
仕事への意欲が高まる30代で得た病は、治療と経過観察を続けなければならず、さらに副作用によってたくさんの不自由ももたらしました。今は酸素ボンベを持ち歩きながら就労を継続していますが、とても元のようには働けません。旅行やコンサートなど、元のように生活を楽しむこともできません。