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 「製薬だけで持続的な成長は望めない」。そんな危機感を背景に、薬にとどまらないさまざまなヘルスケアサービスの提供を目指す塩野義製薬。グローバルに活躍できる多様な人材の育成に向け、ハレーションも覚悟の上で踏み切ったのは、全社員の“再格付け”や所定労働時間の見直しをはじめとする抜本的な人事制度の改革だった。同社はどのような考えで、どんな人事施策に取り組んでいるのか。人事部長・河本高歩氏による講演の概要を紹介する。

※本稿は、Japan Innovation Review主催の「第11回 戦略人事フォーラム」における「特別講演:SHIONOGIにおける人的資本戦略の考え方について/河本高歩氏」(2025年9月に配信)を基に制作しています。

持続的成長に向け人材ポートフォリオ変革に着手

 塩野義製薬は、COVID-19やインフルエンザのワクチンをはじめとする感染症領域の創薬に加え、多様な企業との協業を強みとし、右肩上がりの成長を続けている。しかし、製薬企業には、新薬の特許切れによって売り上げが急減する「特許の崖」といった課題があり、塩野義製薬もその例外ではない。

「製薬だけで持続的な成長は望めない」との危機感の下、同社は現在、「新たなプラットフォームでヘルスケアの未来を創り出す」ことを目指している。薬の提供にとどまらず、そこから派生するさまざまなヘルスケアサービスをグローバルに展開していく考えだ。

 こうした背景を踏まえ、同社ではグローバル競争に打ち勝つ強い個人の育成と、多様な人材が活躍できる組織づくりを目指し、人的資本経営を推進している。

 具体的な戦略としては、社内外の必要な人材を獲得・育成することに加え、働き方改革を通じてエンゲージメントを高め、多様な人材の力を最大限に引き出すことが挙げられる。

 戦略において注目すべきは「どのような人材を拡充するか」という点だ。ビジネスモデルの転換と事業の拡大に伴い、同社は人材ポートフォリオの変革に取り組んでいる。

 その一環として推進したのが、新たな人事制度と働き方改革だ。「適正評価なしに未来はない」「ハレーションもやむを得ない」と断行した改革の内容とは、一体どのようなものか。