写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ
BtoCはもちろん、BtoBにおいてもEC(電子商取引)が当たり前となり、流通や小売を介さない「DtoC(Direct to Consumer)」メーカーの台頭も著しい現在。もはや「EC化」なくして将来を展望することはできない。一方で、会社の仕組みや商習慣、企業文化といった要因により、EC化できていない企業もいまだに多数存在する。本連載では、元アマゾンジャパン創業メンバーの林部健二氏が現実的な視点からEC構築のポイントを説いた『10年後に勝ち残るEC戦略』(林部健二著/プチ・レトル発行)から、内容の一部を抜粋・再編集。
今回は、EC構築になぜトップダウンの意思決定が不可欠なのかを解説する。
日立にみるトップダウンの重要性
そうはいっても、うちにはナイキのようにテクノロジーに強いCEOなんていないし、外部から引き抜くのだって簡単じゃない、と思われるかもしれません。しかし、会社のトップが決断し、変わらない限りデジタル化・EC化は進みません。
ここ数十年、人件費を削って利益を上げることを求められてきた企業では、すでにリソースに余裕がない状態です。そのため、働く人たちの心の奥には、不満があっても「我慢すればいい」「何かを変える必要はない」「リスクを取りたくない」といったネガティブな感情が、常に薄っすらと存在しているのを感じます。そのような状況では、既存事業以外の新しいことに挑戦するチャレンジ精神はなかなか育たないでしょう。
つまり、ボトムアップでの企業改革は期待できません。こういうときこそ、トップの強いリーダーシップが必要になります。「既存業務で手一杯」「新規プロジェクトに人員を割く余裕がない」「予算がない」といった課題は、現場だけではどうすることもできません。経営者がデジタル化・EC化に対して予算と人材のリソースを割く覚悟を持って、最後まで進める必要があるのです。
先ほどのナイキの例は、日本の文化とは異なる外資の企業だから、あのような思い切った改革が実行できるのだと思う人もいるかもしれません。しかし、そんなことはありません。
日本においても、トップダウンで社内の変革に踏み切っていった企業はあります。その1つが日立製作所です。






