“飲みニケーション”は「ケ」から「ハレ」に移行

 サービス産業の生産活動について、経済産業省が活発さを示す指標として付加価値額などを基に算出し公表している第3次産業活動指数によると、2015年を100とした場合、2023年の「パブレストラン・居酒屋」の指数は56.5にとどまります(別掲グラフ参照)。


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 コロナ禍真っただ中の2021年には26.7まで下がっていただけに上昇傾向ではありますが、それでも半分強の水準までしか戻っていません。また、10年前の2013年の指数は112.6でした。それが2014年に106、2015年に100、2016年は92.3と指数は徐々に下降傾向になっていたところにコロナ禍を迎えたという経緯があります。

 アルコール離れが進み、「とりあえず飲みに行こう」とお店に出向く機会が減ってきている様子がうかがえます。

 さらに、コロナ禍のころに入社したZ世代の人たちはずっと外出自粛を要請された環境の中で仕事してきただけに、それまでの世代と比べて職場の人とお酒を飲みに行く機会が極めて少なかったことと思います。そこに社会全体にみられるアルコール離れの傾向も加わって、職場の人たちと頻繁に飲みに行くという雰囲気になじまなくなってきていると感じます。

 かつては何かにつけて頻繁に行われていた飲み会の存在感が薄まっていくと、職場の人たちと一緒にお酒を飲む機会は数カ月に一度行われる会社行事などに限られるようになり、特別な出来事となっていきます。仕事関係者たちとお酒を飲みながら親睦を深める“飲みニケーション”の位置付けは、ケ(日常)からハレ(非日常)へと移ってきているということです。

 これは、昭和から平成初期にかけて社会人デビューし、稼いだ給与をひたすら酒代に費やしてきた人がわんさかいるミドル層やシニア層からすると、かなり衝撃的な出来事かもしれません。ただでさえ、VUCAと言われるほど環境変化の激しい時代。仕事においても、仕事から離れてもゲームチェンジを強いられる板挟み状態はハードです。