ゴーン「補完性があいまい」発言にも三分の理

 日産元会長のカルロス・ゴーンは、ホンダと日産の経営統合について「補完性があいまいだ」と批判した。「盗人猛々しい」を地で行く発言だが、「盗人にも三分の理」との諺もある。

 そもそもゴーンは、2017年CESで基調講演をするほど絶頂期にあり、日産もCESにEVを展示していた。その後、ゴーンは特別背任行為等で起訴され、保釈中にレバノンへ密出国した。

 それはさておき、経営統合による「補完性」の話に戻ると、日産の内田社長は「ホンダと日産は領域がかぶるからこそシナジー効果が大きい」と述べた。でもシナジー効果とは何を指すのか? ゴーンの言う補完性より曖昧である。現時点ではまだ完遂されていないリストラ策以外にシナジーを提示できていないのである。

鴻海EVプラットフォームの強みと弱み

 一方、ホンダとの経営統合に走り出した日産に触手を伸ばしているのが、台湾の鴻海精密工業である。

 鴻海は、2020年10月に参加企業をオープンに募集するEVPF(EVプラットフォーム)を発表した。拡張性とカスタマイズ性に優れ、自社のニーズに合わせてEVを企画・製造でき、EV業界への参入障壁を下げられる強みがある。また鴻海が主導してEV開発製造コンソーシアム「MIH」をつくった。ここには2023年11月時点で日本企業約100社を含む約2700社が参加し、14のワーキンググループが稼働している。

鴻海精密工業が裕隆汽車とともに開発したEVのハード・ソフトウエアのオープンプラットフォーム「MIH」=2020年10月、台湾・台北(写真:NNA/共同通信イメージズ)
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「MIH」は、ひな形のコンセプトカー「Project X」を公開している。

 ただし、このEVPFには弱みもある。その最たるものが自動車の現場経験・知識が少ないことである。この弱みを補強するため、日産は鴻海にとって好都合な「掘り出し物」となる。だから日産への経営参画を狙っているのである。