「組織間戦略」から読み解くEVの戦略的提携
以上述べてきた自動車企業間の戦略的提携を、私の提唱する「組織間戦略」で読み解いてみよう(下図参照)。
「経営戦略」と「組織間関係」を統合する分析方法として「組織間戦略」を提案している。
「経営戦略」は、戦略決定の場所に注目し、トップが事前に意思決定する「計画的戦略」(構想・トップダウン型)と、ミドルが現場で意思決定する「創発的戦略」(現場・ボトムアップ型)に分ける。日本は、トヨタのケイレツのように現場・ボトムアップ型に強く、欧米は構想力を要するトップダウン型に強い傾向にある。
「組織間関係」は、組織間の目的によって「資源補完」と「知識共創」に分ける。
ホンダ・日産の経営統合は、述べてきたように、補完性が不明確である。
ソニーとホンダの提携は、両社による「知識共創」により「AFEELA 1」が創出され、販売開始に至っている。今後、「知識共創」による自動運転の改善等により、さらなる進展が期待できる(上図参照)。
なお、ホンダは米ゼネラル・モーターズ(GM)との戦略的提携を2回も解消している。1度目は、量産価格帯の中小型EVを共同開発すると2022年4月発表したが、2023年11月に中止した。2回目は、2023年10月には自動運転タクシーを共同開発すると発表したが、2024年12月に提携解消した。ホンダは、得意の自前主義から他社との提携に舵を切ったが、提携による成果を上げていない。
ホンダにとって、ソニーとの高級EVしか選択肢が無くなってきたとも言える。
鴻海のEVPFは、参画企業間による共創で新しい価値を生み出し、EV業界への参入障壁を下げられる構想である。シャープの貢献強化、そして日産の参画が実現できれば、より強力なEVPFとなり期待できる。