鴻海のルノーへの仕掛けと勝算
鴻海では、日産元幹部で現在は鴻海のEV事業を率いる関潤氏を中心に、日産の筆頭株主であるルノーから日産株を取得する可能性について交渉している。
鴻海が日産株を取得し経営参画する可能性について考えてみよう。
ルノーは、日産の株式を43.4%保有していたが、資本関係を見直し、相互に15%ずつの出資にすることで合意している。ホンダと日産が統合した場合、先に述べた統合比率によると、ルノーは新会社の株式補保有率約2%となり、もともとの保有率43.4%から激減してしまう。
ルノーは段階的に日産株の売却を進めているが、24年9月末で39%保有し、約23%は信託会社に預けている。この23%はルノーの意思で「自由に売却できる」契約という。日産は、売却の優先交渉権を持つ。競合する自動車メーカーへの売却を禁ずる契約があるが、鴻海へは自動車メーカーでないため、日産と価格等の条件が合わなければ、鴻海への売却は可能と見られる。
鴻海としては、ルノーが保有している日産株の全て、あるいは一部を買い取り、かつルノー・日産にEVPFに参画してほしいと交渉しているのではないだろうか。日産をよく知る関氏とEVPF参画の好材料があり、鴻海の日産への経営参画の可能性はあると思っている。
鴻海董事長「シャープはパートナーで資産」
一方で鴻海は、買収しているシャープにEVへの貢献を強く要請している。
2024年6月27日、鴻海の劉 揚偉(ヤング・リウ)董事長兼CEOが、シャープ会長を兼任する人事が発表された。劉会長は、シャープのEVへの貢献について述べている。
「シャープはパートナーであると同時に、重要な資産でもある。シャープの技術に、鴻海がもつ事業領域の広さ、顧客との深い関係性が加われば、シャープには今まで以上の成長機会が訪れるだろう」
劉会長は、シャープに特にEVに対し補完関係による共創を期待している。逆に言えば、シャープの再再建はEVの開発にかかっている。