「Nishikigoi NFT」の仕掛け人
そして、NCLを率いる林は地方を舞台に活躍するソーシャルイノベーターとして知られている。ブロックチェーンやNFTなど新しい技術を活用した社会変革に積極的で、そのビジョンと、数多くの仲間を集めるカリスマ性には“教祖”の雰囲気も漂う。
そんな林が注目を集めたのは「Nishikigoi NFT」である。中越地震で壊滅的な打撃を受けた旧山古志村(長岡市)の復興のため、TARTと協力して地域の特産である錦鯉をモチーフにしたNFTを発行。グローバルなデジタル関連人口を世界に広げるというプロジェクトだ。NFTの持ち主には、山古志村のデジタル村民になる権利が付与される。
◎NFT×デジタル住民票で関係人口を増やせ!旧山古志村で始まる新しい地域再生(JBpress)
既にNishikigoi NFTのホルダーは1700人と、リアルの住民の数を大きく上回る。NFTは匿名性が高いため、保有者の国籍などは不明だが、コミュニケーションツールとして活用しているSNS「Discord(ディスコード)」のやり取りを見ていると、外国人と思われる投稿も数多い。
投機的なプロジェクトが中心だったNFTをソーシャルイノベーションのツールとして活用したNishikigoi NFTは、世界的な注目を集めた。

このように地域を舞台に独自の社会変革に取り組む林と奈良市が手を組んだ背景には、奈良市の抱える切実な課題があった。(続く)
篠原 匡(しのはら・ただし)
編集者、ジャーナリスト、蛙企画代表取締役
1999年慶応大学商学部卒業、日経BPに入社。日経ビジネス記者や日経ビジネスオンライン記者、日経ビジネスクロスメディア編集長、日経ビジネスニューヨーク支局長、日経ビジネス副編集長を経て、2020年4月に独立。
著書に、『人生は選べる ハッシャダイソーシャルの1500日』(朝日新聞出版)、『神山 地域再生の教科書』(ダイヤモンド社)、『誰も断らない こちら神奈川県座間市生活援護課』(朝日新聞出版)など。『誰も断らない 神奈川県座間市生活援護課』で生協総研賞、『神山 地域再生の教科書』で不動産協会賞を受賞。テレ東ビズの配信企画「ニッポン辺境ビジネス図鑑」でナビゲーターも務めた。