2つの「ゲームチェンジャー」に希望も
米国はAI(人工知能)で主導権を握り、中国は再生可能エネルギーで世界をリードしている現状を重視。これら2つの技術は世界を一変させる「ゲームチェンジャー」の役割を担っているため、多くの国が米中のどちらか一方に味方することは避けようとしていると指摘しました。
そのうえで、アジアや欧州、グローバル・サウスは、米中とそれぞれに協力しながら、両国の持つ技術をうまく活用しようとすると予測。結果的に十億人もの人々が貧困から脱し、教育や医薬品にアクセスできるようになるだろうとして、多極化のプラス面も強調したのです。
同サミットに共同議長として参加した経団連の十倉雅和会長は、Gゼロを避けて世界を安定させるのは「少なくとも2つのことに取り組む必要がある」と指摘しました。
1つは、米国だけに頼らず、複数国が共同でリーダーシップを取って新たな国際秩序を構築していくべきだというもの。もう1つは国際社会における法の支配を取り戻すこと。ルール違反には毅然とした対応を取るとともに、時代の変化を踏まえ、新たな課題に対応したルールを作ることも必要としました。
そして、これら2つの課題に取り組むためにも、国際社会で存在感を高めているグローバル・サウスとの連携が欠かせないと訴えました。
日本は2023年に国内総生産(GDP)でドイツに抜かれて世界4位に転落し、間もなくインドにも追い抜かれようとしています。国内政治も不安定になってきました。国力低下が目立つなか、「Gゼロ」前夜の世界で、果たして確固たる役割をどこまで果たせるのでしょうか。
フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。