世界大戦が起きるリスクも

 2025年で最大のリスクとされた「Gゼロ」について、ユーラシア・グループは「世界的なリーダーシップの欠如は危機的なレベルまで深刻化している」と強調しています。地政学的な不安定が常態化し、世界的な安全保障体制と経済体制が弱体化。「力の空白が新たに生まれて拡大し、ならず者国家が勢いづき、事故、誤算、紛争の可能性が高まるだろう」と予測しているのです。

 そのうえで「世代を超えるような世界的危機、さらには新たな世界大戦が発生するリスクは、私たちが生きてきた中で見たことがないほど高まっている」と結論付けました。

 こうなってしまった原因はどこにあるのでしょうか。ブレマー氏らの見解によると、今の不安定さを作り出している要因は3つあります。

2006年のG8サンクトペテルブルク・サミット。プーチン大統領(右)と握手する当時のブッシュ米大統領(左)(写真:A724/Gamma/AFLO)

 1つは、冷戦後に起きた世界秩序の再構築のなかで、米国を中心とする西側諸国がロシアの統合に失敗したことです。一時期はG7にロシアを加えてG8とする方向も打ち出されましたが、それが頓挫すると、ロシアは米国・欧州に深い憤りと敵意を抱くようになりました。

 プーチン大統領に率いられたロシアは衰退のなかにありながらも、かつての大国に戻ろうとして強権的な統治を続けています。世界で最も危険な「ならず者国家」になったというわけです。

 そうした結果、ロシアは、国際舞台で混乱を生もうとする他の主体、とりわけ北朝鮮やイランと軍事的・戦略的パートナーシップを積極的に構築するなどし、さらに危険な存在となったのです。