政府や民主主義への不信感が広がる
2つ目の要因は中国です。
ロシアとは対照的に、中国は2000年代初頭に世界貿易機関(WTO)に加盟して国際秩序に組み入れられました。しかし、世界経済への統合は必ずしも国際社会の安定にプラスとなっていません。
西側が期待したような、政治体制の民主化や法の支配は確立されず、グローバルな社会に責任を持つ国家とはならなかったのです。その結果、中国と欧米の緊張は深まり、対立はいっそう深刻になっています。
世界を「Gゼロ」の状態に追い込んでいる3つ目の要因は、先進民主主義国の市民たちが、自国の指導者やエリートへの疑いを強めていることです。
冷戦崩壊後、西側で進んできたグローバリズムの価値観は、格差の拡大や人口動態の変化、移民の増大などに直面しています。必ずしも自分たちのプラスになっていないと市民は判断するようになってきたのです。
通信技術の発達によってSNSなどで自由な意見が交わされるようになったこともあり、多くの人々が政府や民主主義そのものに対して根本的な不信感を抱くようになりました。その極めつきが1期目のトランプ大統領に率いられた米国であり、そのトランプ氏はあと数日で再び大統領に就くのです。