一部に、こうしたスキームに懐疑的な声も上がりつつあるが、アメリカではプロスポーツと行政は、ウィン・ウィンの関係を築いてきた。
日本では自治体などが建設した公的施設の管理運営を、民間事業者が担うことは法律でできなかった。従来、地方公共団体の公の施設の管理運営は第3セクターなど公共的な団体に限定されていたのだ。
自治体所有球場を使用する球団に福音となった「指定管理者制度」
しかし小泉純一郎政権の「官から民へ」という方針での大胆な改革によって、「指定管理者制度」ができて状況は大きく変わった。2004年6月の地方自治法改正により、民間事業者やNPB法人なども「指定管理者」の指定を受けることで施設の管理運営を担うことが可能になったのだ。
日本の行政は、法律や規則通りに施設を運用することは得意だが、事業を効率化し、収益性を高めるようなマネジメントは、そもそもそういう発想がないため不得手だった。
従来は公的施設が経営的に行き詰まると、税金から補填して運営を継続してきたが、日本の経済成長が頭打ちとなって国民が「税の使い道」に厳しい目を光らせるようになったために、21世紀にはいると多くの公的施設が事業的に行き詰まった。前述の大阪ドームなどもその一例だ。
「指定管理者制度」は、こうした状況を打開するため事業意欲のある民間に、公的施設の運営管理を委託することで、行政の負担を軽減するという目的で、導入された。
指定管理者として選定された事業者は、施設の管理を従来以上に幅広く代行でき、施設の利用許可権限を持ち、利用料金を自らの収入とすることも可能となった。
指定管理者には、行政が持つ「使用料の強制徴収」、「不服申し立てに対する決定」、「行政財産の目的外使用許可」などの権限は付与されていないが、それ以外の多くの裁量権がゆだねられた。