働き方や就業条件は「個別最適化」していく時代へ

 一方、短時間正社員を導入することで想定されるデメリットも大きく2点あります。まず真っ先に挙げられるのは、短時間正社員が帰宅した後に発生する業務のしわ寄せが、他のフルタイム正社員にとって負担となってしまう懸念でしょう。

 しかしこの点は、先に指摘した通り業務設計次第になります。例えば、行政機関などでは窓口の受付時間は17時までと決まっていたりします。短時間正社員の帰宅時間をあらかじめ顧客と共有しておくだけで、不要な時間外の問い合わせなどを防ぐ確率を高められます。

 他にも、AIチャットを導入したり短時間正社員が帰宅した後の時間帯だけピンポイントでカバーする人員体制をとったり、必要性が薄れた報告書の作成といった無駄なタスクはなくしてしまうなど、他の社員に無理が生じない業務設計に知恵と工夫が求められます。

 もう1つのデメリットは、勤務時間が異なることで社内に不公平感が生じることです。しかしながら、そもそも仕事内容や給与など、就業条件は働き手ごとに異なっています。さらに、時代は働き方がより柔軟化する方向へと進んでいます。ワークライフバランスを推進し、長期休暇を取得したりワーケーションしたりと、働き方は個々の事情や志向に応じて個別最適化していく流れです。

 もちろん職場によって方針は異なりますが、副業促進の機運も徐々に高まっています。いまや、新卒社員でさえ待遇に違いを設けるケースも見られます。職場に集う人が一律に同じ条件で働くことの方が珍しくなりつつあることを考えると、不公平というより、時代の流れは最適な働き方が個々に違うことを受け入れる方向へと進んでいると感じます。

 前出のしゅふJOB総研の調査では、短時間正社員の普及を妨げている要因のトップ3に「事例が少ない」「上司や同僚の無理解」「体制の不整備」が挙げられています。事例が少ないことはすぐにはどうしようもありませんが、短時間正社員のメリットが認識されるようになればなるほど周囲の無理解は減り、積極的に導入する職場が増えて不整備も解消されていけば、事例も増えていくはずです。