今後増えていく余地がある「戦略的短時間正社員」の導入
いまは福利厚生的な短時間正社員導入が主流になっていますが、多くのメリットがあることを踏まえると、戦力として積極的に導入する戦略的短時間正社員の導入が今後増えていく余地があると感じます。
そのためにまず必要なのは、正社員はフルタイムでしか働けないという固定概念を取り払うことです。長年政府が推進してきたテレワークは、コロナ禍に見舞われるまで広がることのない夢の働き方でした。
しかし、日本生産性本部が公表している「第15回 働く人の意識に関する調査」によると、いまは導入率が16%程度にとどまるとはいえ、決して夢の働き方ではなく一般的な選択肢の一つに組み込まれて定着しています。
「多様な働き方の実現応援サイト」には、すでに短時間正社員の導入事例がたくさん掲載されています。副業促進や男性の家事育児機会が増えていくにつれ、もっと時間の融通を利かせながら収入やキャリアを発展させていきたいという希望は、性別を問わず高まっていく可能性があります。
短時間正社員は、そんな希望を実現させられる選択肢の一つに違いありません。今後徐々に事例が増えていけば、短時間正社員もテレワークと同様に夢の働き方ではなくなり、やがて一般的な働き方の選択肢として市民権を得ることになるのではないでしょうか。
【川上 敬太郎(かわかみ・けいたろう)】
ワークスタイル研究家。男女の双子を含む、2男2女4児の父で兼業主夫。1973年三重県津市出身。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関『しゅふJOB総合研究所』所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ約5万人の声を調査・分析したレポートは300本を超える。NHK「あさイチ」、テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」等メディアへの出演、寄稿、コメント多数。現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構株式会社 非常勤監査役の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。