トルコとシリアの融和がロシアの利益に

青山:トルコと協調するシリア新政権の存在が、ロシアの地政学的利益に直結するからです。仮に新政権がトルコと仲違いすると、ロシアはシリアでの権益を守るべく、トルコに敵対するリスクに直面します。

 ロシアがトルコと敵対してしまうと、ウクライナ戦争にも影響が出ます。トルコは黒海の南側に位置(ウクライナは北側)していることから、対ウクライナ戦略に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 シリアの新政権がトルコと融和すれば、ロシアは中東での影響力を維持しつつ、ウクライナ戦争にも専念できるのです。
 
 結局のところ、シャーム解放機構が今後長続きするかどうかは、相矛盾する大国の利害にどれだけ寄り添えるかにかかっています。自国で自国の運命を決める余地が限りなく少ない以上、新政権の舵取りは大国の意向を受けたものになるしかないのです。

(前編から読む)>>シリア・アサド政権崩壊、現地知る専門家だから分かる本当の理由…反政府勢力だけではない、背後に何が?