中性子線でエラーが起こるとしたら

 さてテレビ朝日の発表によると、7月23日の事故は「メモリーエラー」によって引き起こされたということです。ネットワークスイッチ内のメモリに記録されたデータの値が、違う値に置き換わっていた(0のはずが1になっていたか、あるいは1のはずが0になっていたか)ために起きたものです。

 そして調査を行なった設備メーカーは、このメモリーエラーは「中性子線の影響が原因であると判断」しました。

 つまり、大気上層から降ってきた中性子の1個が、コンクリートや鉄骨と反応することなく建物を透過し、サーバー室に設置されたネットワークスイッチに入射し、メモリを構成する半導体内に侵入したところで、たまたま何らかの原子核と衝突してこれを弾き飛ばし、弾き飛ばされて電子を失いイオン化した原子核は半導体内を走りながらそこら中のケイ素原子から電子を叩き出し正孔を生み出し、それがメモリの値を変化させ、ネットワークスイッチを誤動作させ、LANをダウンさせ、LANにつながれた放送設備を制御不能にし、放送を停止させ、視聴者を困惑させ関係者を恐慌に陥れた、という判断です。

 ちなみに半導体回路にエラーを発生させる放射線は、宇宙線起源の中性子線が最も多く、存在量では勝るミュー粒子線はほとんど寄与しません。ミュー粒子線がエラーを発生させる確率は中性子線の2%という実験結果があります。中性子は一旦反応すると大きなエネルギーを半導体回路内に落とすのに対し、ミュー粒子はほとんどのエネルギーを保持したまま半導体回路を去ってしまうためです。

 これで謎は解け、原因は解明され、犯人は判明し、放送停止事件は解決した・・・のでしょうか?