アズキはどこから来て、どこへ行くのか。(写真はイメージ)
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(小谷太郎:大学教員・サイエンスライター)

 アズキ(小豆)といえば、冬はおしるこやあんまん、夏はあずきアイス、ハレの日には赤飯と、四季を通じて日本の食生活を(赤に)彩るおなじみのマメ科植物です。アズキは中国など東アジアで栽培されている作物ですが、特に日本では人気があって、日本人のソウルフードのひとつといえるでしょう。

 栽培されているアズキは、ヤブツルアズキという野生種から品種改良で作られたものですが、おそらくイネやアワ、キビなど他の栽培植物と同様に、中国大陸から弥生時代の日本列島に渡ってきたのだろうとこれまで考えられてきました。

 先日2025年5月30日、台湾大学の李承叡(リー・チェンルイ)教授、農研機構の内藤健上級研究員らの研究グループは、アズキの栽培化が日本で始まったことをゲノム解析で明らかにしたと発表しました(※1)。

 発表によると、3000年前〜5000年前の縄文時代に、日本の野生のヤブツルアズキから栽培アズキが作られ、これが東アジアに広まったといいます。アズキは日本で栽培植物化され、それを行なったのは縄文人だったというのです。

 これは重大な研究成果です。縄文時代と農耕とアズキについてのこれまでの定説も常識も片端から書き換えです。前世紀の教科書は墨で真っ黒に塗りつぶさないといけないでしょう。