栽培アズキの作られかたが判明

 内藤上級研究員らによる今回の発表は、日本、朝鮮半島、中国大陸、台湾といった東アジア各地から、栽培アズキと野生アズキ(ヤブツルアズキ)693系統を採集し、そのDNAを読み取って解析した結果です。単にたくさんアズキを集めてそのDNAの文字列が似ているかどうか比べたのではなく、その機能まで深く調べた研究です。

(かつては「DNAを解読した」と称する研究は、DNAに記された文字列をほとんど意味も分からずに読み取るだけだったのですが、このごろはDNAの文章の意味や機能までちゃんと「解読」する研究が可能になってきました。)

 今回の研究により、野生アズキがどのように栽培アズキに進化したか、その過程が初めて明らかにされました。

 栽培アズキは野生アズキに比べて、種皮が赤く、黒い斑点がない、という目立つ特徴があります。

 栽培アズキの種皮の赤さは、野生アズキの「アントシアニジン還元酵素遺伝子 (ANR1)」という遺伝子が、1箇所突然変異を起して、役に立たなくなったためと分かりました。

 また野生アズキの黒い斑点の原因である「アントシアニン沈着生成遺伝子 (PAP1)」は、栽培アズキのゲノムからは、複製の失敗によって削除されていることがわかりました。

 おそらく古代人は、こうした変異を起した株をめざとく見つけ、注意深く選別して育てて、ついでに種子を大きくする変異や、さやが弾けない(収穫しやすい)変異なども取り入れて、栽培アズキを育成したのでしょう。

 この研究では、アズキの色を変えたANR1やPAPの突然変異を特定し、さらに野生タイプのANR1やPAPを栽培アズキに注入して、野生アズキの種皮の色が復活することまで確かめています。アズキに感染するウイルスを用いて遺伝子を注入したと、論文にサラリと書いてありますが、大した実験技術です(※2)。

ヤブツルアズキ。 Photo by Qwert1234, under CC BY-SA.