CO2を出さず、燃料が枯渇する心配がない

田口:他の発電方式と比べると、いくつか異なる特徴があります。

 1つは、CO2を出さないということです。AIなどさまざまなテクノロジーの利用もあり、人口の減っていく日本でも電力需要は今後、伸びていくことが予想されます。電力の供給を満たしつつ、脱炭素も両立できるので期待されているのです。

 2つ目は、例えば火力発電などと比べると、核融合には燃料の枯渇の心配がありません。核融合の燃料は主に海水から採れる物質を使用しますが、ごく微量で、ものすごく大きなエネルギーが生み出せます。つまり、燃料は世界中どこからでも調達できて、枯渇の心配もないということです。

 3つ目は、原子力発電との違いです。これは大きく分けて2つあります。原発は核分裂という反応によって連鎖反応が起きるため、制御棒を入れて連鎖反応を制御しなければなりません。制御がうまくいかなければ、連鎖反応が続いて暴走します。

 しかし、核融合の場合、原理的に連鎖反応は起こりません。むしろ継続的に起こし続けることが難しいからこそ、まだ実用化には成功していません。つまり、何かあったらすぐに運転が止まるので安全です。

 原発の場合は高レベルの放射性廃棄物が出て、1万年の単位で放射線を出し続けます。これは回避不可能です。だから、ある程度処理して、地中の深いところに埋めるしかありません。

 でも、核融合の場合は、それほど長い時間放射線を出し続ける、いわゆる高レベル放射性廃棄物は出ません。核融合発電により発生する放射性廃棄物は長くても数十年から100年くらい安全に保管しておけば、回収して次の核融合炉の資材などに再利用できます。自分たちとその次の世代くらいで責任を持って回収することができる。

 4つ目は、太陽光や風力などに代表される再生可能エネルギー、再エネとの比較です。再エネの場合は、エネルギーの生産量は天候に左右され、大規模な開発も難しい。核融合は変動せずに安定的な電源として使うことができるし、エネルギーの密度が高いので、大規模な発電も可能です。