核融合の初号機にかかる費用はいかほどか?
田口:現在、研究開発が最も盛んなのはトカマク型です。
トカマク型はいち早く1000万度を超える高温プラズマを実現し、また形状が比較的単純で実験や理論予測もしやすかったため、世界中で多くの装置が作られて研究が進みました。このためレーガン大統領とゴルバチョフ書記長の、1985年の米ソ首脳会談の共同声明で始まった「ITER計画」にも採用されました。
※ITER計画:日本・欧州・米国・ロシア・韓国・中国・インドが協力して進める核融合の国際プロジェクト。フランスに実験施設があり、現在、2034年からの運転開始を目指している。
ITER計画は巨大なプロジェクトで、国際協調で進めています。その研究開発で得た知見は各国が持ち帰り、それぞれ自国での核融合の研究開発に活かします。ITER計画がトカマク型を採用していることで、各国でもトカマク型を開発していれば知見を適用しやすいために、国際的なスタンダードとして広がったのです 。
一方で、弊社が採用しているヘリカル型は、実は日本で生み出された方式です。1950年代に京都大学で発明された方式で、トカマク型とほぼ同じ長さの研究の歴史を持っています。
1980年代にHelical Fusionの出身母体である国立の核融合科学研究所が岐阜県土岐市に設立されました。そこに「大型ヘリカル装置(LHD)」という世界最大級のプラズマ実験装置が作られ、これまで運用されてきました。
このようなヘリカル型の大型装置を持っているのは日本だけです。さらに、国家プロジェクトとして数千億円をかけて知見が積み上げられ、ヘリカル型の場合、どのようにすれば核融合反応を起こすためのプラズマができるか、ほとんど分かっています。
──御社の核融合技術は、いつ頃実用化されるとお考えですか?
田口:現在「2034年の発電開始」を、最短のタイムラインとして目指しています。
──実用化が始まった場合、どこかに核融合の発電所を建設するのですか?
田口:場所はまだ決めていませんが、炉を建設しなければなりません。その際には、法規制の整備、そして、地元の自治体様と地域の住民様のご理解が必要になります。
──実用化するとしたら、どれくらい資金が必要になるのでしょう?
田口:弊社が2034年に運転を開始したいと考えている初号機は、数千億円から1兆円ほど建設費がかかります。
──施設の規模はどれくらいになるのですか?
田口:全部同じ平面に並べたとしたら、およそ校庭を含んだ小学校1校くらいのスペースです。
ただ、弊社ではすべてを平面に設置するのではなく、サブシステムなどは地下に設置する形も考えているので、横数十メートル、縦200メートルくらいのサイズの箱があれば、作ることができる設計にしています。
──原子力発電、太陽光発電、風力発電など、さまざまな発電技術がありますが、核融合発電所を実用化した場合、生み出す電力は他の技術と比較して、どれくらいの規模になるのでしょうか?