ホストクラブの高額請求問題は根本的には変わっていない(写真:© Taidgh Barron/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ「ZUMA Press」)ホストクラブの高額請求問題は根本的には変わっていない(写真:© Taidgh Barron/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ「ZUMA Press」)

 新宿歌舞伎町などを中心に、ホストクラブが客の女性に高額な売掛を行い、店に対して多額の借金を背負わせ、支払うために性風俗店で働かせたり、女性客の家族に強烈な取り立てを行ったりするケースがたびたび報道されている。

 社会問題化した現状を受け、昨年12月には歌舞伎町のホストクラブ(13グループ)の経営者たちと新宿区が集まり、今年4月から売掛をしないことなどを決めて公に発表。国会でも6月7日に悪質ホストクラブ被害防止法案が提出された。

 これで高額請求問題が解決したのかというと、どうやらそうでもないようだ。7月12日に新宿区が実施した「悪質高額請求被害防止キャンペーン」の際に、新宿区長と一般社団法人青母連(青少年を守る父母の連絡協議会)の代表にそれぞれ話を聞いたが、全く異なる見解と主張が返ってきた。以下、それぞれの言葉を記す。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

【新宿区長・吉住健一氏の見解】
──昨年12月に、新宿区と歌舞伎町のホストクラブの経営者が集まり、今年4月から「売掛はもうしない」という取り決めを発表しました。その後の状況はいかがですか?

吉住健一区長(以下、吉住):私たちから「売掛をやめてください」というお願いをしたわけではありません。ホストクラブ自身が、自分たちが今後生き残るために、必要な手段として「売掛をやめる」という宣言をしたということです。

「できない約束はしないでください」と私どもはお話ししましたが、本人たち(ホストクラブ側)が「やる」と決めました。今のところ、宣言をした店舗の直営店などは約束を守っているようです。

 現在、2カ月に1度くらいのペースで連絡会を開いています。その中で出てくる話としては、お店に来る女性客が「今日はお金を持っているから払えます」と言っていたけれど、いざ会計で数万円足りなかったりした場合、店側が損切りするのか、警察に相談して対応してもらうのか、そのどちらにするのかという悩みがあるなど、具体的な話も出ています。

──ホストクラブと新宿区の連絡会とは、どのように行われているのでしょうか?

吉住:概ね20グループくらいの企業が集まっています。主たるメンバーは毎回出席し、都合で残りのメンバーは毎回変わります。歌舞伎町の中の220〜230の店舗が対象ですが、売掛の規制を始めたことと、被害防止キャンペーンが進んできたこともあり、全体の1割ほどの店舗が閉鎖したと聞いています。

 ただ、そういった話は公安委員会の取り扱いで、私たちに届け出があるわけではないので、本当に1割減ったのか、私どもは把握できていません。

──売掛をやっていることが明らかになった場合、罰則などはあるのでしょうか?

吉住:あくまでも「売掛禁止」はホストクラブ側が自主的に作ったルールです。法令に基づいた罰則というものはありません。私たちとは別に、ホストクラブ側が一般社団法人を立ち上げており、その中の幹事の皆さんが、お客様から違反行為の届け出があった場合に、自主的に自分たちで注意をしにいくという形を取っているようです。

──女性客たちに性風俗店で働くよう、ホストクラブ側がうながしていたことも問題視されてきました。この点に関しては、4月以降何かメスは入っているのでしょうか?

吉住:そこは完全に警察の仕事になってしまうのですが、「スカウト(性風俗店にスカウトする人)」という反社会的勢力と縁を切るということをホストクラブ側が自主的に宣言されましたので、それを「とにかく守ってください」と連絡会の度に確認しております。

 ただ、それはあくまでも自己申告になります。私たち(新宿区)は調査する能力は持っていませんので、繰り返し伝えていくしかないと考えています。

──売掛をどの程度ちゃんとやめているのか、データなどを発表される機会は今後お考えですか?

吉住:私たちがデータを持っているわけではありませんので、ホストクラブ側がそうしたデータをちゃんととりまとめできるかどうか、ということになると思います。その辺はホストクラブ側に意向を聞いてみようと思います。