実質賃金のプラス化は共通するが経路に大きな違い

 主要6政党いずれも、物価高対策として、物価上昇を上回る賃上げの実現、すなわち実質賃金の前年比プラスを目指している点で共通する。ただ、実質賃金のプラス化を図るための経路、経済政策の考え方には違いがある。

 自民、公明の与党両党、ならびに日本維新の会は、いずれも成長戦略を重視している。設備投資や人への投資を通じて成長力や生産性を向上させ、持続的な実質賃金のプラス化を目指すという考え方である。

 5月25日付けの拙稿「【実質賃金・24カ月連続減!】上場企業の純利益は最高益なのに実質賃金の減少は過去最長を更新、なぜ増えないのか?」でも解説の通り、持続的な実質賃金増加のためには、時間当たり労働生産性の上昇が必要になる。

 国民民主党も設備投資や人への投資を掲げているが、さらに積極財政等と金融緩和による「高圧経済」の必要性を強調している点が特徴的だ。

 対して、立憲民主党は物価安定目標を「2%」から「0%超」に変更した上で、「実質賃金上昇」を政府・日銀の共同目標に掲げる方針を示している。

 立憲民主党は2022年の参院選でも、2%物価安定目標や異次元緩和を円安進行の背景と位置づけた上で、物価高騰対策として金融政策の見直しを掲げていたが、今回は物価安定目標の変更に踏み込んでいる。

 なお、「0%超」が具体的にどの程度の水準、レンジを指すのかは不明だが、数値を「2%」から引き下げている点を踏まえれば、物価上昇を抑えることを主眼に置いていよう。

 人手不足が今後も継続、そして深刻化しやすい中、仮に物価目標を「0%超」とするならば、大幅な金融引き締め、そして急速な円高を迫られる可能性がある。

 日本共産党は、「大企業の内部留保に時限的に課税して10兆円規模の財源を確保」した上で、中小企業の賃上げを直接支援する方針を掲げている。日本共産党はかねてより、「大企業・大金持ち優遇」を転換、分配策を通じた格差是正を主張するケースが多いが、今回も同様だ。

物価高対策の与野党公約
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