永田町では、勝敗ラインとして「自民単独過半数」および「与党過半数」の2つが注目されている。衆院選終盤に与党の苦戦が伝えられ、「与党過半数割れ」の可能性がある。
「与党過半数割れ」となった場合、政権は不安定化する可能性が高い。石破首相が「与党過半数」を勝敗ラインに掲げているため、責任を取ってただちに退陣を選択する可能性や、石破首相が政権継続を目指して衆院での多数派工作を選択する可能性も考えられる。こうした多数派工作には、政治日程を踏まえるとタイムリミットが存在する。
衆院選の結果は、経済政策にも影響を与えよう。2つの勝敗ラインに基づき、3パターンで整理してみる。(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)
<内閣支持率は低い滑り出し>
第50回衆議院議員総選挙は10月27日に投開票を迎える。本稿では衆院選の議席数の予想には立ち入らないが、参考指標となる石破政権の内閣支持率は、発足直後の滑り出しとしては低水準にとどまっている。昨年末以来の自民党の政治資金問題が背景だろう。
時事通信社の世論調査によれば、2024年10月の内閣支持率は28.0%。「危険水域」と目される低水準のスタートとなった。
長期にデータを得られるNHK世論調査をみても、石破政権の2024年10月の内閣支持率は44%にとどまり、発足時としては麻生政権の46%(2008年10月)を下回り、森政権の39%(2000年4月)に次ぐ低水準だ。3年前(2021年10月)の岸田政権の49%と比べても低い。
<自民党には逆風が多い>
低い内閣支持率と単純に連動させれば、衆院総選挙後における自民党の議席数は、3年前の衆院選後(261議席)や今回の衆院解散前(258議席)を下回る計算になる。
政治資金問題が取り沙汰された前職議員のうち11人が公認されず、公示前勢力は247議席となった。衆院選で当選すれば追加公認される可能性はあるものの、非公認の分、候補者数が直接的に減少、総選挙に向けて発射台が低くなった格好だ。
自民党執行部は、非公認のほか、一部議員に比例代表との重複立候補を認めないなど、厳しい処分を科すことで国民の理解を得ようとした。しかし、党内政局の様相を帯びたこともあり、争点潰しに至らず、かえって政治資金問題を再びクローズアップさせた側面もある。
また、忘れられがちであるが、今回は「1票の格差」を是正するため、小選挙区の区割りを「10増10減」、比例代表ブロックを「3増3減」により変更して臨む最初の衆院選である。議席数は地方が減って都市部が増え、自民党には元々不利な選挙戦である。