与党過半数割れの場合のシナリオ
<経済政策への影響は? ①自民単独過半数維持の場合>
まず、「自民単独過半数維持」の場合、石破政権の勝利と受け止められる。基本的に、おおむね安定した政権基盤の下、石破政権は政権公約に基づき政策を遂行できるだろう。公約の詳細は10月19日付拙稿「給付金・補助金か減税か、衆院選2024の与野党公約を総まとめ」を参照されたい。
来年夏に控える参院選も勝利できれば、石破首相は持論を推進しやすくなろう。
財政運営については、来年夏頃まで、「経済あっての財政」の考え方に基づき、どちらかといえば拡張的な路線が採られると思われる。金融政策スタンスについては、日銀による金融緩和と言える領域、すなわち中立金利を超えない範囲での正常化推進を許容しやすい。
<経済政策への影響は? ②与党過半数維持の場合>
「自民単独過半数割れ」かつ「与党過半数維持」の場合、石破政権幹部は選挙結果を勝利と受け止めようが、自民党非主流派は敗北と主張するだろう。党内抗争が生じるようであれば、政権運営がやや不安定化する可能性があるが、石破政権自体は継続しやすいだろう。
財政運営や金融政策スタンスも、基本的には「自民単独過半数維持」ケースと大きく変わらないが、非主流派の主張に一定程度配慮する可能性がある。
財政運営については「自民単独過半数維持」よりも拡張的になりやすい。金融政策については、総裁選直後にみられたように、円高・株安進行なら利上げに消極的となり、逆に円安進行なら利上げ容認など、為替動向に配慮したスタンスになりやすいのではないか。
<経済政策への影響は? ③与党過半数割れの場合>
仮に「与党過半数割れ」となる場合、どの政党と連立を組むか、あるいは誰が次の総理・総裁になるか次第で、経済政策は大きく変わってくるだろう。
石破首相が退陣を選択する場合、次の総理・総裁として有力になるのは、岸田前首相および前回の総裁選においてある程度得票した議員だろう。1回目投票で1位の高市氏、3位の小泉氏、4位の林氏、5位の小林氏あたりが候補になりそうだ。この中で誰が有力かは、誰が出馬するかの構図次第であり、現段階で予想は難しい。
誰が次の総理・総裁になるかで、連立を組む政党の候補も変わってこよう。もしくは連立候補の選択が総裁選の争点にもなりえる。
小泉氏を支援する菅元首相は、日本維新の会に近いと目される。高市氏および小林氏は、非公認議員と近いほか、積極財政路線で国民民主党と近い。岸田氏および林氏は、国民民主党と政策的に乖離しているが、宏池会に縁のある国民民主党の玉木代表に近いと目される。
参考まで、次ページに自民党内の有力者や主要野党の経済政策スタンスを財政、金融政策の2つを軸として大まかに整理している。