多数派工作のタイムリミット

<与党過半数割れの場合はどうなるか?>
「与党過半数割れ」となった場合、政権は不安定化する可能性が高いだろう。

 石破首相が「与党過半数」を勝敗ラインに掲げているため、責任を取ってただちに退陣を選択する可能性が考えられる一方、石破首相が政権継続を目指して衆院での多数派工作を選択する可能性もある。どちらを選択するか、衆院選結果や党内情勢、そして石破首相の決断次第であり、現時点で予想は難しい。

 石破首相が多数派工作を図るとしても、日程的な制約がある。

 憲法第54条第1項は、衆議院議員総選挙の日から30日以内、今回で言えば11月26日までに、特別国会を召集しなければならない、と定める。召集とともに内閣が総辞職し、衆参両院において首班指名が行われ、衆参両院で過半数を得た者が内閣総理大臣に指名される。両院における首班指名が異なる場合は、衆院の議決が参院に優先する。

 政権継続のために、石破首相は特別国会召集に間に合うように衆院で与党過半数を確保せねばならない。ただ、召集ぎりぎりまで多数派工作の時間的余裕があるわけではない。多数派工作に失敗して退陣する場合、自民党総裁選を実施する期間を考慮せねばならないためだ。

 先般実施されたような総裁公選では12日以上の選挙期間を要するが、臨時の総裁選であれば短期間で実施可能だ。例えば、菅氏が総裁に選ばれた2020年の総裁選の選挙期間は、9月8日に告示、9月14日に投開票の6日間だった。逆算すれば、多数派工作を選択するとしても、11月初頭頃がタイムリミットになるのではないか。

<多数派工作の選択肢は?>
 石破首相が多数派工作を図る場合、まず考えられるのは、非公認により無所属で出馬した後に当選した議員を追加公認する、もしくは自民党会派に引き入れることだ。ただ、非公認となった議員が石破政権の維持に協力するかは不透明だ。

 もう一つ考えられるのは、連立政権に国民民主党もしくは日本維新の会を引き入れること、もしくは部分的な協力を仰ぐ選択肢だ。こうした多数派工作の成功により、石破政権は継続する可能性はある。

 一方、ただちに退陣、もしくは多数派工作に失敗して退陣の場合、臨時の総裁選が実施される。自民党の党則に基づけば、臨時の総裁選は、衆参両院議員および都道府県支部連合会代表各3名の投票により実施される。

 衆院選の結果は、経済政策にどのような影響を与えるであろうか。2つの勝敗ラインに基づき、3パターンで整理してみる。