最高裁判所の大法廷。写真は2015年(写真:共同通信社)

10月27日に投開票される衆院選に合わせ、最高裁判所裁判官の国民審査も実施されます。この国民審査は衆院選の投票日に必ず行われますが、その意味や仕組みなどは、あまり知られていないかもしれません。今回の国民審査の対象となる6人の裁判官たちは、どのような司法判断を下してきたのでしょうか。やさしく解説します。

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国民に「憲法の番人」を罷免する権利

 自由と民主主義に重きを置く日本は、他の先進国などと同様、「三権分立」を国家統治の基礎としています。三権分立とは、立法(議会)・行政(内閣など)・司法(裁判所)という3つの独立した機関が相互に抑制し合い、バランスを保つことによって権力の濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障する原則のことで、日本国憲法によって定められています。

 裁判所は三権分立の一翼を担う重要な機構であり、その頂点に立つのが最高裁判所です。「憲法の番人」と呼ばれるように、最高裁は三権の中でもとくに重要な役割を担っており、その判断は法の改廃を決めたり、社会制度の変更を促したりします。

 最高裁の裁判官は、長官および14人の最高裁判事によって構成されています。最高裁における裁判は、これら15人で構成される「大法廷」と、5人ずつで構成される「小法廷」で裁かれます。社会や政治に大きな影響を与える重要事件だけでなく、過去の憲法判断を変えたり、新たな憲法判断を示したりする場合は大法廷を開いて判決を言い渡すことになります。

 裁判官はその良心のみを行使し、憲法や法律に基づいて公正な裁判を行い、国民の権利を守るという重い責任を持っています。特定の勢力、国会や内閣などからの圧力でその責務が歪められることがあってはなりません。そのため、日本国憲法は行政による裁判官の処分を禁止。在任中は報酬を減額してはならず、下記のケースを除いて裁判官を辞めさせることはできないと定めています。

(1)公の弾劾によるとき
(2)心身の故障のために職務を執ることができないと裁判されたとき
(3)国民審査において投票者の多数が罷免を可とするとき

 このうち、(1)の「公の弾劾」とは、衆参の国会議員14人で構成された「裁判官弾劾裁判所」の判断を指しています。弾劾の対象となるのは、職務上の義務に著しく違反したり怠ったりしたケース、および、裁判官としての威信を著しく失墜させる非行があったときに限られています。つまり、裁判官の身分は極めて手厚く保障されているわけです。

 それでも、憲法は「国の主人公は国民」「国民が主権者」という原則を徹底的に貫き、裁判官を罷免できる権利を国民に与えました。それが(3)の「国民審査」です。