辞めさせたければ「×」を付ける
最高裁判所裁判官国民審査は日本国憲法第79条に規定されており、すでに任命されている最高裁の裁判官がその職責にふさわしい者かどうかを国民が審査する解職の制度です。最高裁自身も「国民主権の観点から重要な意義を持つもの」としています。
最高裁判所の裁判官は任命後に初めて行われる衆院選挙の投票日に国民審査を受け、この審査の日から10年を経過した後に初めて行われる衆院選挙の投票日にも再び審査を受けます。任期がさらに長くなった裁判官は、その後も同様のサイクルで審査を受けます。
衆院選の投票権を持つ人は全員、国民審査の投票権を持っています。
投票の方法は極めてシンプルです。衆院選の投票所に行くと、衆院選で小選挙区と比例代表の2票を投じたあと、国民審査の投票用紙を渡されます。用紙には審査対象となる裁判官の氏名が書かれており、裁判官ごとに辞めさせたい意思があれば「×」を記載し、なければ何も記載せずに投票します。
「×」を入れなかった裁判官については、「信任」と判断されますから、注意が必要です。「よくわからない」などの理由で無印にすると、「○」と同じ意味になってしまうのです。
結果はどのように判定されるのでしょうか。
「×」票が何も記載されていない票の票数を超えた場合、その裁判官は罷免されます。ただし、国民審査の投票総数が選挙人名簿登録者数の100分の1に達していない場合には、「×」が上回っていても罷免されることはありません。
1949年以降、国民審査は25回行われており、今回が26回目です。過去の国民審査で罷免された裁判官はいません。「罷免すべき」という有権者の判断、すなわち「×」が最も多かったのは、1972年12月の国民審査における下田武三氏(外務省出身)の15.17%です。
近年では「×」は10%以下ばかり。衆院選に比べて報道量・情報量が極端に少ないことから、このままの運用を続けていると、近年は50%台にしかならない投票率がさらに下がるかもしれないとの懸念も出ています。