米大統領選は11月5日の投票日まで残り2週間となりました。民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領の両陣営による最終盤の攻防は激しさを増しています。各種世論調査を見ても、どちらが勝つか予断を許しません。選挙戦で両候補はどのような政策を訴えてきたのでしょうか。米国の有権者に向けた両氏の訴えをやさしく解説します。
(西村卓也:フリーランス記者、フロントラインプレス)
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経済政策:ハリス=中・低所得者の減税に焦点、トランプ=法人税率15%に
米国の有権者が最も重視するのは経済政策です。新型コロナウイルスによるパンデミックやロシアのウクライナ侵攻など国際情勢の混乱によってもたらされたインフレは、米国民の生活を直撃しました。経済政策でどう支持を取り付けるのか。そこが選挙結果に大きく影響しそうです。
民主党のハリス氏も共和党のトランプ氏も「減税」を強く主張していますが、その内容は異なっています。
ハリス氏は中間層と低所得者層に焦点を当て、生活支援を充実させると訴えています。富豪であるトランプ氏との違いを強調する狙いです。そして大統領に当選すれば、初めて持ち家を買う人のためのローン支援として、最大2万5000ドル(約370万円)の頭金を提供すると説明しています。
子供が生まれた家庭には最初の1年間に6000ドル(約89万円)の税控除を実施します。また、個人所得税の税率を下げる一方で、法人税率を21%から28%に引き上げて大企業優遇を是正するほか、小規模スタートアップ企業には従来の10倍となる5万ドル(約745万円)の税控除を行うと提案しています。
トランプ氏はどんな政策を訴えているのでしょうか。
大統領在任中の2017年には、10年間で総額1.5兆ドル(約223兆円)規模の大型減税を実施しました。法人税率を35%から21%に引き下げたほか、個人所得税の最高税率を39.6%から37%に下げたため、富裕層優遇との指摘も出ていました。
そのトランプ氏はいま、法人税率をさらに引き下げて15%にすることや、引き下げた個人所得税率に設定されている2025年の期限を延長するよう主張しています。また、トランプ氏は景気刺激のための金利引き下げを主張すると同時に、連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策に対し大統領が発言権を持つべきだと主張。中央銀行の独立性を脅かしかねないこの姿勢は、物議を醸しています。
減税の財源はどう捻出するのでしょうか。ハリス氏は大企業や富裕層への増税で賄う考えですが、トランプ氏は経済成長や外国からの輸入品に高関税を課すことで可能だとしています。