むしろ増税を志向している立憲民主党

 野党は税制を含めて財政に関する方針を多く盛り込んでいるが、その方向感は異なる。

 日本維新の会は、公約では財政スタンスを明記していないが、基本的には身を切る改革などを通じた「小さな政府」を志向している。税制は消費税、所得税、法人税の減税を掲げており、分配機能といった政府の役割を縮小する方針とみられる。

 一方、国民民主党は「未来志向の積極財政」を掲げるなど、明確に「大きな政府」を志向している。財源として「教育国債」の創設や日銀保有国債の一部永久国債化等を提案している。

 先述の通り、消費税については5%への税率引き下げを掲げているほか、所得税については様々な控除拡大を通じた減税を図る方針だ。なお、富裕層向けには金融所得課税の強化など負担増を掲げ、格差是正を図る施策も一部で盛り込んでいる。

 日本共産党は、格差是正を主眼として税財政を運営する方針だ。「大企業・大金持ち」に負担を求めて中小企業や低所得層への支援を強化し、財源が足りなければ国債発行で対処する方針で、「大きな政府」を志向していよう。

 対して、立憲民主党は「中長期的に財政の健全化を目指す」方針を明記している。税制についても、他の野党と異なり、減税を主張していない。むしろ所得税の累進性強化や金融所得課税の強化など、財政健全化および格差是正を図るために増税を志向している。

 社会保障制度についても、国民民主党や日本共産党は社会保険料負担軽減もしくは給付増を掲げているが、立憲民主党は富裕層を対象とした社会保険料負担増を求める方針だ。

【宮前 耕也(みやまえ こうや)】
SMBC日興証券㈱日本担当シニアエコノミスト
1979年生まれ、大阪府出身。1997年に私立清風南海高等学校を卒業。2002年に東京大学経済学部を卒業後、大阪ガス㈱入社。2006年に財務省へ出向、大臣官房総合政策課調査員として日本経済、財政、エネルギー市場の分析に従事。2008年に野村證券㈱入社、債券アナリスト兼エコノミストとして日本経済、金融政策の分析に従事。2011年にSMBC日興証券㈱入社。エコノミスト、シニア財政アナリスト等を経て現職。
著書に、『アベノミクス2020-人口、財政、エネルギー』(エネルギーフォーラム社、単著)、『図説 日本の財政(平成18年度版)』および『図説 日本の財政(平成19年度版)』(東洋経済新報社、分担執筆)がある。