新しい総裁の下、自民党は生まれ変わることができるか?(写真:ロイター/アフロ)新しい総裁の下、自民党は生まれ変わることができるか?(写真:ロイター/アフロ)

(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)

 自民党総裁選は立候補者が7人もしくはそれ以上となる見込みだ。1回目の投票では国会議員票が分散すると見込まれるため、国民人気が高い者が決選投票へ進出しやすい。決選投票でどのような連合が成立するかが、総裁選を制する決定的な要因となる。

 誰が新総裁(=新首相)になるかで、政策の方向性は変わってくる。本稿では、やや気が早いものの、過去の発言等を踏まえ、主要候補の経済政策スタンスを財政、金融政策の2つを軸として大まかに整理する。

<自民党総裁選の日程が決まる>
 自民党の総裁選挙管理委員会は、岸田首相(党総裁)の任期満了に伴う総裁公選を9月12日(木)告示、27日(金)投開票の日程で実施することを決定した。岸田首相が不出馬を表明した後、10人以上が立候補の意欲を示す乱立模様となっている。

 立候補には20人の党所属国会議員による推薦を告示日(候補者届出締切日)の9月12日までに確保する必要がある。議員は推薦人に名前を連ね、その候補が敗北する場合、自身が新総裁による人事などで冷遇されるリスクを負う。そのため、推薦人集めのハードルは相応に高い。

 ただ、今回については派閥解消が進んだ影響により、旧派閥内で複数名が立候補する動きや旧派閥を越えて支援する動きがみられるなど、議員の支持は分散している模様だ。実際に立候補に至るのは7人もしくはそれ以上となりそうだ。

<従来の総裁選との違い>
 政治資金問題を受けて、今回の総裁選はできるだけ金が掛からない方式とするよう検討が進んでいる。具体的には、党員へのパンフレット等の一斉郵送や、自動音声等で支持を呼び掛ける架電について、制限すべきかなどが議論されている。

 これまでも、告示後の一斉郵送は禁止されているが、告示前であれば可能であった。架電については、告示前も後も制限がない。仮にこれらの活動が制限されれば、資金力のある候補者の優位性が失われる。

 代わりに、党主催の討論会の回数が増える方向だ。選挙期間は、従来12日間となるケースが多かった。自民党の総裁公選規程の第8条第3項では、議員投票日の12日前までに総裁選挙を告示するよう定められており、これに沿って12日前の告示となるケースが多かった。

 だが、政策論争の時間を確保するため、今回は過去最長となる15日間に設定された。各候補者はパンフレット等で自らが掲げる政策案を示す見込みだが、討論会などでの発言も注目されよう。また、討論会が増える分、政策案の矛盾や失言等が生じて致命傷となるリスクが増大する点にも注意したい。