保守派のあの候補の政策スタンスは?

<保守派候補の政策スタンス>
 保守派のうち、高市経済安全保障相は、2021年の総裁選でアベノミクス継承を強く打ち出していた。当時、「サナエノミクス」の3本の矢として、「金融緩和」「緊急時の機動的な財政出動」「大胆な危機管理投資・成長投資」を掲げ、PB目標の一時凍結と財政出動の必要性を強調していた。現在でも、金融緩和と積極財政を推進するスタンスに大きく変わりはないとみられる。

 小林前経済安全保障相は、8月19日の記者会見において、地方への大胆な投資や、防災・国土強靭化のためのインフラ投資の必要性を打ち出している。ただし、インタビュー等では、財政健全化は必要になる、との見解も示している。金融政策については、日銀が利上げを判断する際には丁寧な対話を行うよう求めた。

<スタンスは変わり得る>
 以上、過去の発言等を踏まえ、主要総裁候補の経済政策スタンスを整理したが、過去と現在、そして今後で経済政策スタンスが変わり得る点に注意する必要がある。

 例えば、岸田首相は、2020年の総裁選ではマイナス金利政策の弊害や財政健全化を目指す方針を強調するなどアベノミクス修正を掲げていたが、2021年の総裁選では一転してアベノミクス継承を打ち出した。各候補の経済政策スタンスや具体的な政策の比較については、パンフレット等が出揃った段階で改めて整理したい。

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【宮前 耕也(みやまえ こうや)】
SMBC日興証券㈱日本担当シニアエコノミスト
1979年生まれ、大阪府出身。1997年に私立清風南海高等学校を卒業。2002年に東京大学経済学部を卒業後、大阪ガス㈱入社。2006年に財務省へ出向、大臣官房総合政策課調査員として日本経済、財政、エネルギー市場の分析に従事。2008年に野村證券㈱入社、債券アナリスト兼エコノミストとして日本経済、金融政策の分析に従事。2011年にSMBC日興証券㈱入社。エコノミスト、シニア財政アナリスト等を経て現職。
著書に、『アベノミクス2020-人口、財政、エネルギー』(エネルギーフォーラム社、単著)、『図説 日本の財政(平成18年度版)』および『図説 日本の財政(平成19年度版)』(東洋経済新報社、分担執筆)がある。