「対立」に舵を切る小石河連合

<総裁選には11人のうち7人以上が出馬へ>
 主要メディアでは11人が自民党総裁候補として取り沙汰されている。実際に立候補に至るのは7人もしくはそれ以上となりそうだ。

 小林鷹之・前経済安全保障相は8月19日に出馬を表明済みだ。本稿執筆時点では、石破茂元幹事長は8月24日に、河野太郎デジタル相は26日に、林芳正官房長官は27日に、それぞれ出馬を表明する予定だ。

 また、各紙報道に基づけば、小泉進次郎・元環境相、高市早苗・経済安全保障相、茂木敏充幹事長は推薦人確保のめどが立った模様だ。立候補の可能性が高いとみてよいだろう。また、加藤勝信・元官房長官、上川陽子外相、野田聖子・元総務相は、推薦人確保に向けて働きかけを行っている模様だ。齋藤健・経済産業相は出馬を検討している模様だ。

<予想外だった点>
 2024年8月1日の拙稿「あのダークホースは?自民党総裁選・主要候補の顔ぶれと立候補の可能性」では、自民党総裁選が主流派と非主流派、保守派の3つの陣営に分かれて争われることになると指摘した。大まかな構図は変わっていないが、予想外だったのは、いずれの陣営も候補が一本化されず、乱立に至ったということだ。

 主流派は、麻生派、旧岸田派、旧谷垣グループのいわゆる大宏池会に加え、旧茂木派から構成される。麻生派から河野デジタル相、旧岸田派から林官房長官、旧茂木派から茂木幹事長がそれぞれ立候補する見込みだ。なお、旧岸田派からは上川外相も出馬を模索している。

 非主流派は、菅氏に近い議員に加え、旧二階派、旧森山派、旧石破グループから構成される。菅氏は小泉元環境相を支援する見込みで、中心的な候補となりそうだ。また、石破元幹事長も立候補する予定だ。

 なお、加藤元官房長官は、旧茂木派に属していたが、もともと菅氏に近いと考えられる。野田元総務相は前回の総裁選では旧二階派の支援を受けて出馬に至ったほか、齋藤経済産業相は旧石破グループにかつて所属していた。加藤氏、野田氏、齋藤氏は立候補すれば非主流派に位置づけられよう。

 かつて党内第1派閥であった旧安倍派を中心とする保守派の候補は、7月時点では高市経済安全保障相に一本化される可能性が高いと予想した。だが、前回の総裁選で高市氏の推薦人に名を連ねた小林前経済安全保障相が、旧二階派出身ながらも、福田元総務会長を中心とする旧安倍派の若手、および麻生派の甘利前幹事長の支援を受けて立候補に至っている。

<小石河は「連合」から「対立」へ>
 以上のように、主流派からは3人(最大4人)、非主流派からは2人(最大5人)、保守派からは2人が出馬することになりそうだ。先述の通り、1回目の投票では国会議員票が分散すると見込まれるため、国民人気が高い者が決選投票へ進出しやすいだろう。

 各種世論調査では、小泉氏、石破氏、河野氏の人気が安定して高い。前回の総裁選では、小石河「連合」として、非主流派の候補を河野氏に一本化したが、今回は対立関係となる。また、このところの世論調査では、高市氏も上位に食い込むケースが多い。

 ただ、立候補断念や辞退、旧派閥連携による一本化の動きなどがあれば、情勢は変わってくる。高市氏や小泉氏と支持層が重複するとみられる小林氏の勢いも予想が難しい。