6.日本が国家分断に陥らない原因

 日本の国民は初詣で、法事、観光などで寺社に参拝し、手を合わせることが多い。

 神仏に祈りを捧げる時には誰もが心の中に絶対的存在を思い浮かべている。

 また、日本人の多くが「お天道様が見ている」という言葉で自分の行動を内省し、規律することの大切さを理解している。その際の心の中は謙虚である。

 謙虚な姿勢に基づく内省を通じて、正直、誠実であることを重んじる精神基盤が国民に浸透している。

 正直になることで自分に対して嘘をつくことに敏感になり、自分の心をごまかせば良心の呵責を覚える。これが日本人の精神基盤となっている。

 この精神基盤が広く共有されていると、エコチェンバー現象の一定の歯止めになる。もちろん今の日本でも反中感情の蔓延はエコチェンバー現象と言える。

 しかし、それが米国ほど極端な対中強硬論やデカップリング政策にはつながっていない。

 政党間の対立はあるが、それが極端なイデオロギー対立になって感情的な非難の応酬にまではなっていない。

 これは日本人の精神基盤として「正直」「誠実」を重んじる文化が定着していることが一定程度影響していると考えられる。

 21世紀に入り、世界は大きな転換点に差し掛かり、米国の一極覇権体制から多極化に向かっている。

 経済のグローバル化が進み、各国間の相互協力はますます重要になっている。

 そうした中でイデオロギー対立の生み出す不毛な分断を抑制するには、integrityの際立つリーダーが必要である。

 そうしたリーダーが登場し、グローバル社会の安定化に貢献することを期待したい。