2.深刻な党派対立を生むエコチェンバー現象

 米国で2大政党の支持者同士が激しく対立して社会が分断されている原因の一つはネット情報によって引き起こされている事実認識の相違にあると指摘されている。

 一般的に民主党支持者は「フェイスブック(FB)」を主な情報源としているのに対し、共和党支持者は「エックス(X:旧ツイッター)」を主な情報源としている。

 それぞれのニュースソースはそれぞれの政党支持者の嗜好に合うような情報を提供するため、自分の支持政党に合致する情報源から情報を得ていれば気分よく様々な事象を理解できる。

 逆に、反対の政党の支持者から支持される情報源にアクセスすると不愉快な情報ばかり目にするため、そちらにはアクセスしないようになる。

 FBもXもそれぞれの情報を好む支持者を喜ばせる情報を流し続けることで営利企業として利潤を高めることができるため、事実を客観的に伝えるより読者を喜ばせる方に力点が置かれる傾向があると言われている。

 党派色が強まると読者の好みにも合致するため歓迎される。

 このようなメカニズムで米国社会の情報は分断され、支持政党によって事実認識までが異なる状況になっている。

 人々が特定の嗜好に合わせた情報ばかりに依存して他の客観的な事実認識を受け入れにくくなる現象は「フィルターバブル」と呼ばれている。

 また、偏った情報を共有して排他的な集団を形成する現象は「サイバーカスケード」と呼ばれる。

 そして、自分と似た意見の人たちばかりと意見交換を続けているうちに、自分の意見が一般的に正しいと思いこむようになる現象を「エコチェンバー現象」と呼ぶ。

 これらの表現によって示される状況に陥れば、自分と異なる意見の人々はすべて間違った事実認識に基づいていると考えるようになるため、政策等に関する建設的な議論が成立しなくなる。

 反対政党の意見はそもそも事実認識が間違っているので、耳を傾ける意味がないと考えるようになる。