4.イデオロギー対立の強調が共通要因

 米国社会の分断と米中対立の深刻化に共通する要因はイデオロギー対立の強調である。

 国内の政策課題や外交・通商問題等に関して客観的な事実の認識に基づいて関係者が建設的な議論を積み重ねれば、一定の妥協案の下にコンセンサスが形成される可能性が高い。

 しかし、イデオロギー対立を強調すれば、相手の主張はすべて相手側のイデオロギーを補強するためのものであると考えるようになる。

 相手のイデオロギーを否定するためには、相手の主張を徹底的に否定するしかない。

 そうしたイデオロギー対立が前提になっていれば建設的な議論は非常に難しくなる。

 これが最近の民主党と共和党の対立図式であり、米国の対中強硬論やデカップリング政策主張の背景にもなっている。

 米国の多くの専門家や有識者はこのような不毛な党派対立や非建設的な外交・通商政策を批判している。

 しかし、エコチェンバー現象に陥っている人々を説得することは非常に難しく、ワシントンD.C.の状況に改善は見られていない。