両国の結束を誇示する目的もあって米国を訪問した岸田首相だったが・・・(4月9日ホワイトハウスで、写真:ロイター/アフロ)

1.日米首脳の外交協力が招いた世界分断

 7月21日、米国のジョー・バイデン大統領が大統領選挙からの撤退を表明した。それから1カ月も経たない8月14日、岸田文雄首相が9月の自民党総裁選不出馬を表明した。

 4月の岸田首相訪米時に日米関係がかつてないほど強固な関係にあることを強調した2人が似たような形で政治の表舞台から相次いで降りることになった。

 2人のリーダーの共通点は民主主義、法の支配を強調したことだった。そのために同志国の結束を呼び掛けた。

 確かに日米両国の外交面での結束は強まったように見える。

 しかし、欧州諸国を含めた民主主義国全体の結束が強まったという評価は西側諸国の有識者との面談であまり聞いたことがない。

 トランプ政権時代に一度失われた米欧間の信頼関係を元のレベルにまで回復させることが難しかったためである。

 バイデン大統領は、内政面では民主党と共和党の対立が激化して分裂した米国社会を再び1つに結束させることを選挙公約に掲げたが、その目標を果たすことができなかった。

 今も民主党と共和党はほとんどの内政課題において互いに批判し合い、建設的な議論の機会が乏しく、米社会は深刻な党派分裂に苦しんでいる。

 バイデン政権は、外交面ではイデオロギー対立を強調し、民主主義国VS専制主義国の対立図式の中で同志国の結束を呼び掛けた。

 米国内の党派対立の図式を国際社会に適用したように見える。岸田政権はそれを強く支持し、日米フィリピンの協力、日本とAUKUS(米英豪3か国軍事同盟)との協力検討など安全保障面での日米協力を強化した。

 しかし、同志国の結束強化は同志国ではない国家の排除を意味する。

 その結果として経済安保面における日米と中国の対立激化などグローバル社会の分裂は深まった。