地方私立大学の厳しい現実を見るべき

 そもそも新設の大学はどこも厳しい局面にある。

 宝塚医療大学(兵庫県宝塚市)が今年4月に開設した観光学部(沖縄県・宮古島キャンパス)は定員100人に対し入学予定者22人にとどまった。全員が海外からの留学生で、入学式の出席は入国手続きが済んだ6人だけだった。

 2004年に開学した千葉科学大学(千葉県銚子市)は、2009年から定員割れが常態化し、学校法人が地元・銚子市に「公立化」を打診する事態に陥っている。同大の誘致・開設ではすでに77億円の公費投入をしてきた経過もあり、銚子市では市民をも巻き込んだ議論になっている。

 厳しいのは新設大学だけではない。日本私立学校振興・共済事業団の調査によると、2024年度、定員割れした四年制私立大学は354校で総数598校の59.2%。前年度比5.9ポイント増で4年連続の増加だ。この数字だけを見ても私大経営の困難さがよくわかる。

 こういった状況だからこそ、全国各地で地方私大の公立化の検討や、経営母体が不安な法人による経営引受け、留学生頼みに偏る経営といった私大の課題をよく耳にする。

 一方で、こうした現実のもとに進む大学計画の無謀さをとりあげないメディアの責任は重い。武雄アジア大学の場合、地元の佐賀新聞の姿勢は気になる。最近は批判的意見を取り上げる場面もあるもののあくまで両論併記にとどまる。問題意識をもってジャーナリスティックな視点から鋭く切り込んでいっているようには見えない。

 今回の大学に関しては、佐賀新聞の中尾清一郎社長自身が、新大学名称委員会の委員として関与している。その結果、報道が抑制的になっているのだとしたら残念なことだ。