洪水対策、物価対策などに活用してほしい

 さらに武雄市の職員からは、「小松さんが総務省出身なので特別交付税交付金(特交)を引っ張ってくれる」という期待を耳にする。しかし、私も総務省OBだからわかるが、普通に考えるとそれは無理だ。

 財源として市の基金を取り崩すといっても、大学に対して出せる基金はない。総務省が反対する。

 私が市長の時に武雄市の基金を100億円ほど積み増ししたが、それは未来の武雄市のため、たとえば洪水対策などに活用するためだ。ちなみに現在の武雄市が洪水対策でやっているのは、「田んぼダム」程度にすぎない。当の農家の皆さんは呆れ返っている。

 もし基金を例外的に取り崩しできたとしても、大学に充てられるのは微々たるものであろう。こんなこと総務省出身の小松市長はよく知っているはずだ。

 ちなみにデジタル田園都市構想交付金についても武雄市が5億円の申請をしていたが、もともと交付金要綱から完全に外れているので不認可と聞いている。担当職員は財源がないと嘆いていると聞く。気の毒で仕方がない。

 なぜ財政が厳しい折に、経済効果が薄い大学計画に13億円も払わないといけないのか謎である。洪水対策、物価対策などに活用してほしいと思うのは、前市長の私だけではあるまい。

 もちろん、これが実績のある大学や需要のある高専、看護系大学なら検討する余地はある。

 実は、私は総務省から大阪・高槻市に出向していたときに、大学誘致担当部長として関西大学を誘致した。

 関西大学ののれん代、経済効果(幼稚園から大学院まで設置してもらった)など総合的に勘案し、私が指揮する市長公室企画課は大学側と一体となって事業に取り組んだ。市長、私とで何度も国や大阪府に出掛けて直談判した。そこには市長しかできないことが少なからずあったからだ。

 高槻市は全部で30億円投じたが、その経済効果は500億円以上と聞いている。

 阪急グループの力を借りて、JR高槻駅前の関大の真横に2つ高層マンションを建ててもらい、駅周辺の価値を上げるなど再開発も一体となって進めた。

 それは厳しい仕事だった。この丈夫な私が、あの当時はうつになる一歩手前だった。それでも頑張れたのは、自分のためではなく高槻のためになる、大阪のためになると本気で思ったからである。

 武雄市の場合、関係者に聞いても市長、副市長などが積極的に動いた形跡が見えてこない。