そもそも大学は税金を払わない

 経済効果については、市民有志らがつくる「武雄アジア大学を考える会」が、税収のシミュレーションについて再計算をしている。

 武雄市が公表している「武雄アジア大学 完成年度(2029年度)に増加する市の税収(単年)シミュレーション」の点検を行ったところ、武雄市が導き出した3280万円の税収増加が、実際は643万円にとどまるというのだ。

 武雄市の試算は、教職員全員が市内に定住するほか、定員充足率を毎年100%と想定し、在学生の50%が市内に居住するなど、極めて現実離れしている。考える会が、類似事例調査などをもとに実際に近い数値で再計算したところ、税収増加額は年間643万円となった。武雄市試算の約2割程度だった。

 そもそも大学は宗教法人と同じでほぼ無税だ。固定資産税ほか、多くの免税措置がある。企業誘致は、法人住民税、固定資産税その他もろもろ入ってくるので、誘致のための費用以上に返ってくるが、それとは大きく違う。

 たとえば私が手掛けた新武雄病院の誘致では、同病院を含め全国で8つの病院を経営する一般社団法人巨樹の会には、無理をお願いしてその本店を武雄市に置いてもらった。

 その売上は600億円、佐賀県の企業としては久光製薬などの大企業についで5位となる。病院のまわりに商業施設、住宅、会社が立ち並ぶことになった。

 かたや武雄アジア大学は、学費から人件費、維持費等を差っ引くとほぼ利益をあげることはできないかマイナスだろう。税収などほとんど期待できない。

 ちなみに、巨樹の会を運営するグループには、赤字だらけの旧市民病院を4億6000万円で売却した。これも市の収入になった。

 市のプロジェクトは、市民のお金を預かる以上、これぐらい徹底した姿勢が必要だ。