東京大学本郷キャンパス内にある安田講堂。地方出身者が減る背景と、その影響を識者が解説(写真:共同通信社)東京大学本郷キャンパス内にある安田講堂。地方出身者が減る背景と、その影響を識者が解説(写真:共同通信社)
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 東大含む(いわゆる)旧帝大合格者のうち、東京圏出身者の割合が近年顕著に増えている――。3日付の毎日新聞朝刊が、長年『サンデー毎日』が収集してきたデータをもとに、こんな分析結果を報じた。本人が選択しえない「生まれ」による教育格差は、いまどんな状況にあるのか。出身地域の多様性が下がったキャンパスは、学生・社会にどんな影響を与えるのか。『教育格差』(ちくま新書)の著書がある龍谷大学社会学部の松岡亮二・准教授が、3回にわたり、毎日新聞が報じたデータを独自分析した上で詳しく解説する。

#1/全3回

毎日新聞特集ページ「受験格差」

(松岡 亮二:龍谷大学社会学部 准教授)

非三大都市圏の東大合格者:41.1%→30.7%

 東京大学の合格者に占める東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)出身者1の割合が近年増加傾向にある2

 センター試験初年度である1990年を起点とすると(図1)3、東京圏出身者が東大合格者全体に占める割合(以下、占有率)が最も低いのは2009年で、2010年から大学進学率の高い三大都市圏のうち東京圏出身者の占有率だけが上昇し、2022年には56.5%に達した4

 出身高校を国私立と公立で分けると、2009年の東京圏の国私立校の占有率は全体の36.0%だったが2022年には43.6%まで上がった。同様に、東京圏の公立校の占有率は2009年に7.1%だったのが2022年には12.9%となった。

 東京圏以外の三大都市圏である2府2県(愛知県、京都府、大阪府、兵庫県)からの占有率は2009年に15.8%だったのが2022年に12.8%、残りの39道県である非三大都市圏は2009年に41.1%を占めていたが2022年には30.7%まで落ちている。

(筆者作成。以下、グラフはいずれも同)
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1 本稿では東京圏に立地する高校の出身者を東京圏出身者として定義している。2府2県出身と非三大都市圏出身についても同様。
2 大学通信とサンデー毎日による学校回答に基づく集計。なお、1998年~2004年あたりにおいて主に非三大都市圏の学校の未回答があり、非三大都市圏の占有率が低く出ている可能性がある。なお、2016年時点の報道には下記がある。「(教育考差点)首都圏集中、画一化の懸念 東京の有名大学合格者」『朝日新聞』(2016年5月1日 朝刊).
3 データは毎日新聞を通して大学通信から貸与を受けた。ここに記して感謝する。
4 2023年度は53.8%に微減。

松岡 亮二(まつおか・りょうじ)
龍谷大学社会学部准教授。ハワイ州立大学マノア校教育学部博士課程教育政策学専攻修了。東北大学大学院COEフェロー、統計数理研究所特任研究員、早稲田大学助教・専任講師・准教授を経て、2022年度より現職。早稲田大学リサーチアワード「国際研究発信力」(2020年度)などを受賞。著書『教育格差(ちくま新書)』は、1年間に刊行された1500点以上の新書の中から中央公論新社主催「新書大賞2020」で3位に選出。2024年4月時点で16刷、電子版と合わせて6万8000部突破。